モロッコの民法(D.O.C.)の翻訳や適用に関する問題について述べています。具体的には、フランスの法体系からの移植による用語の不整合や、イスラーム法との矛盾が指摘されています。以下、主な内容を解説します。
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翻訳と用語の不整合
モロッコの民法(D.O.C.)において、フランス法から翻訳された用語が適切でない場合があることが指摘されています。例えば、フランス語の法的用語がアラビア語に翻訳される過程で、誤った意味が伝わったり、意味が曖昧になったりすることがあります。このような誤った翻訳は、特に刑事事件などで深刻な影響を及ぼす可能性があるとされています。さらに、法典における用語が統一されていないため、異なる裁判所や専門家が異なる解釈をすることがあり、法の一貫性が欠けているとされています。 -
法的矛盾
モロッコ民法とイスラーム法、さらにモロッコ国内で実際に使用されている他の法律や慣習法との間に矛盾が生じています。例えば、D.O.C.の229条(C.O.C.の241条)では、相続人が相続を拒否できることが明記されていますが、イスラーム法では相続が自動的に相続人に移転し、負債を相続人自身が支払うことは求められないという規定があります。このような相違が、モロッコの実際の裁判所での適用において問題となることが考えられます。 -
文化的・社会的適応の欠如
D.O.C.は、フランスの法体系をモロッコに適用しようとする試みですが、モロッコの社会や文化、特にイスラーム法の特徴を考慮していないため、法的な不適合が生じていると指摘されています。例えば、モロッコの農村部では、法典に記載された契約形式が現実的に適用されていない場合があり、伝統的な契約(例えばモウガラサ契約やムサカート契約)などが依然として利用されているという問題があります。 -
法典の改正の試み
モロッコでは、D.O.C.のアラビア語版を改訂するための委員会が2004年に設立され、2009年に新しいアラビア語版が公開されました。しかし、この改訂版でも用語の選択や法的明確化が十分に行われていないと批判されています。特に、新しいアラビア語版では、脚注で新しい用語が提案されているだけで、法典本体には明確な用語選択がなされていないため、混乱が続いているとのことです。 -
実務家の自由な対応
最後に、Azzimanはモロッコの実務家に対し、社会の実際の状況に応じた法の適用を求めています。モロッコには公式の法(D.O.C.)の他にも、現地の実情に基づく慣習法やイスラーム法が共存しており、これらを適切に調整し、法の適用に柔軟性を持たせることが必要だとしています。
要するに、モロッコの民法はフランス法の影響を受けていますが、翻訳や社会的背景の違いから法の適用に問題が生じていることを指摘し、法典の見直しや実務家の自由な対応が求められているという内容です。