モロッコの国王ムハンマド6世が1999年に即位してから進めた法改革は、労働法にも影響を与えていると考えられます。モロッコは経済的な発展を促進するために法的枠組みを整備してきましたが、この改革の一環として労働法や労働市場の規制も改正されています。
例えば、モロッコの労働法は、労働者の権利保護を強化する方向で見直され、労働者の待遇や労働条件が改善されるような政策が取り入れられました。また、外国投資を促進するためには、投資家にとって予測可能で安定した労働法制が重要です。そのため、モロッコ政府は労働法を調整し、企業が活動しやすく、かつ労働者の権利も保護されるようにバランスを取ろうとしています。
具体的には、労働契約や解雇に関する規定、労働条件に関する基準が見直され、また労働組合との協議や労使関係が強化されました。これにより、モロッコは労働市場を改革し、外国企業が投資をしやすく、かつ社会的な安定を維持するよう努めていると言えるでしょう。
このような改革が進むことで、モロッコは外国投資家にとって魅力的な市場となり、投資家が労働法の枠組みの中で安心してビジネスを展開できる環境が整備されています。結果的に、ムハンマド6世の法改革は、労働法を含む法制度全般において投資家に対する友好的な姿勢を示すものとなっています。
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モロッコのICSID(国際投資紛争解決センター)での経験は短く、これまでに3件の案件が提起されています。最新の2件は2000年に起こされましたが、そのうちの2件は、モロッコ政府が契約違反をしただけで、BIT(投資協定)違反には該当しないとされ、ICSIDはその管轄権を認めませんでした。残りの1件は、モロッコと相手方が友好的に解決したため、裁判所の判断を必要としませんでした。
モロッコのICSIDでの経験が少ない理由には2つの可能性があります。1つ目は、モロッコが投資家にとって安心できる国で、政府が投資協定(BIT)の義務をしっかり守っていることです。2つ目は、モロッコへの外国直接投資(FDI)の流入が少ないため、投資紛争も少なかったことです。モロッコはアフリカで投資先として注目されている国であり、1つ目の理由がより妥当であると考えられます。また、モロッコの国王ムハンマド6世は1999年に即位してから法改革を進め、投資環境を整備してきたことも、モロッコの投資家に対する友好的な姿勢を示しています。
モロッコが投資協定(BIT)の義務に沿った国内実務を行っているかどうかについては、サリーニ・コストゥルトリS.p.A.対モロッコのケースが参考になります。このケースでは、モロッコ側が国内法を基に「投資」の定義を主張しましたが、裁判所はそれを認めませんでした。結局、モロッコは理論的には難しい部分もありますが、実際には投資家保護のためにBITの義務を守っていると言えるでしょう。