モロッコの労働法制について、わかりやすく説明します。
労働法の概要
モロッコでは、労働市場に関する規制や基準を定めた法律が多く存在します。これらの法律の多くは王室の勅令(ダヒール)に基づいており、近年、労働法典によって改正されることもありました。たとえば、モロッコでは、2019年時点で675件の労働関連の法律があり、近年いくつかの重要な法律が改正されました。
重要な法改正
- 年金法(2016年):公務員の退職年齢を60歳から63歳に引き上げる改正が行われました。
- 家庭労働者の権利を守る法律(2016年):家庭で働く労働者に最低賃金や労働時間制限を適用し、休養日を保障する画期的な法律です。以前は家庭労働者は労働法に含まれておらず、保護がありませんでした。
モロッコの選挙と議会
モロッコでは、議会の選挙が全国で行われ、議会には2つの院(上下院)があります。
- モロッコ代表議会(下院):325名の議員が選ばれ、そのうち30名は女性専用のリストから選出されます。
- 評議員議会(上院):120名の議員が選ばれ、地方議会や専門職の議会などから選出されます。
また、労働組合や雇用主団体は、議会内で自らの代表を持っています。たとえば、モロッコ経済産業商業団体(CGEM)などの雇用主団体や、主要な労働組合(UMT、CDT、UGTMなど)が、労働者や企業の利益を代表しています。
憲法の変更(2011年)
モロッコの憲法は2011年に改正され、王の権限が一部首相に移譲されました。これにより、首相が高級公務員の任命や内閣会議の議長を務めることができるようになり、議会の権限も強化されました。ただし、憲法改正が王の権力を大きく削減するものではなかったという批判もあります。新憲法では、労働組合の自由や結社の自由、ストライキ権なども保障され、労働組合の社会的役割が強化されました。
地方分権と改革(2020年)
2019年には、地方分権が進められることが発表され、地方機関の強化が図られる予定でした。しかし、COVID-19の影響でこの改革は一時的に停滞しました。
まとめ
モロッコの労働法制は、王室の勅令や法律によって規定されていますが、近年では、年金制度改革や家庭労働者の権利保護など、社会的な問題への対応が進められています。議会や労働組合の活動も重要な役割を果たしており、政治的にも地方分権を進める方向で改革が進行しています。
ーーー
モロッコの労働立法は、労働市場を規制し、労働者の権利を保護するための基準や制限を設定しています。これには、労働条件、賃金、労働組合、団体労働争議、社会保障制度の規制が含まれます。モロッコの労働法典は、王政勅令(ダヒール)とともに労働関係の法的枠組みを提供しています。近年では、年金改革法(定年年齢を引き上げ)や、従来は労働法の適用外であった家事労働者に対する画期的な法改正などが行われました。
しかし、いくつかの課題も残っています。例えば、ストライキ権の制限、労働組合の代表権に対する制限、農業労働者が労働法の適用外であることなどです。また、インフォーマル経済が広がっており、労働規制が不十分であるため、労働者は十分に保護されていないことも問題視されています。さらに、労働法の執行は、リソースや監視スタッフの不足が原因で不十分だと批判されています。
モロッコは、国際労働機関(ILO)の65の条約を批准しています。これには、職業安全衛生に関する条約、雇用のための移住に関する条約、社会保障に関する条約が含まれています。ただし、ILOの基本的な8つの条約のうち、特に「結社の自由および組織権の保護に関する条約(C087)」は批准しておらず、労働組合活動に関しては権利にギャップが残っています。
ーー
モロッコの労働政策や貿易協定について、わかりやすく説明します。
労働政策
モロッコは、労働者の権利を守るためにいくつかの重要な法律を整備しています。例えば、労働市場を強化するために「ANAPEC」という機関が設立され、求職者向けのプログラム(例えば、失業中の卒業生への賃金補助や職業訓練)が提供されています。また、モロッコ政府は、若者を労働市場に統合するための取り組みを行っており、これには職業訓練や企業支援が含まれます。
貿易協定
モロッコは多くの国と貿易協定を結んでいます。これには、エジプトやトルコ、アメリカなどと結んだ自由貿易協定(FTA)が含まれます。自由貿易協定は、貿易の障壁を減らし、モロッコの製品やサービスが他国市場で売られやすくするものです。モロッコはまた、欧州連合(EU)との深層包括的自由貿易地域(DCFTA)の交渉も行っており、これによりモロッコの経済がさらにEUと統合されることを目指しています。
ILOとの関係
モロッコは、国際労働機関(ILO)のいくつかの条約を批准しており、労働者の権利を守るための取り組みを国際基準に合わせています。ILOは、モロッコに対して最低賃金の支払いを非公式経済(例えば、家庭内労働など)にも適用するように求めています。
このように、モロッコは労働市場の改善と国際貿易の拡大に向けて、さまざまな施策を進めています。