一五八号条約の報告義務と適用監視
一五八号条約の批准国が提出する報告書について、理事会が定めた様式によって、条約の適用除外が単なる批准国の自由ではないことが明確にされます。具体的には、以下の要件が規定されています:
- 第2項では、批准国は適用除外した被用者のカテゴリーを報告書で示さなければならない。
- 第3項では、関係する保護手段がどのように設けられているのかを示す必要があります。
- 第4項では、「特別の取り決め」に関する情報を提供する必要があります。
- 第4項および第5項では、適用除外に関する協議が行われたかどうかを報告しなければならないという要件が課されています。
このように、適用除外に関する協議と監視が強調され、批准国は報告書を通じてその適用状況を示さなければならず、国際的な監視体制が確立されています。
ILOによる適用監視と報告の重要性
一五八号条約は、促進的条約ではなく、具体的な権利・義務を定めた条約です。そのため、批准後に適用が確保されれば、法律などが変更されない限り、その後も適用され続けます。しかし、条約第2条第6項によって、ILOの適用監視機関が批准国に対して適用範囲の拡充を促すシステムが設けられています。特に、広範な適用除外を設けた国でも、報告書提出とその後の適用監視を通じて、次第に適用範囲を広げることが期待されています。
このように、適用監視の重要性は高く、ILOは定期的な報告を通じて条約の実施状況をチェックし、適用範囲の拡大を促進する役割を担っています。
解雇の正当な理由
一五八号条約第4条は、解雇の正当な理由について定めています。この条項は、一一九号勧告の第2項1をほぼそのまま繰り返しており、解雇には以下の条件が求められています:
- 労働者の能力または行為に関連する正当な理由。
- 企業、事業所、部局の運営上の必要に基づく正当な理由。
この原則により、労働者は正当な理由がない限り解雇されてはならないことが強調されています。
また、第5条では、解雇の正当な理由にならない事項として5点が挙げられています。これらは、一一九号勧告の第3項に対応する内容で、解雇に関する基準を明確化し、労働者の保護を強化しています。
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解雇の正当な理由と手続き的保障
一五八号条約第5条および一六六号勧告における解雇の正当な理由に関連する規定は、労働者保護のために強化された要素を反映しています。これらの規定は、特定の事項について解雇が正当な理由とならないことを明確にし、また労働者が不当解雇から保護されるための手続き的な保障も強調されています。
解雇の正当な理由にならない事項
一五八号条約第5条では、解雇の正当な理由として認められない事項として、以下の2つが具体的に挙げられています:
- 組合活動への参加(労働時間外または使用者の同意を得て労働時間内に組合活動に参加すること)
- 労働者代表としての行動(労働者代表に就任しようとした、または労働者代表の資格で行動したこと)
これらは、一一九号勧告第3項に対応する内容であり、労働者が労働組合活動や労働者代表としての行動を理由に解雇されることを禁止しています。また、権限ある行政機関への訴えや使用者を相手とした苦情申立・争訟手続参加も解雇の正当な理由にはならないとされています。
さらに、一五八号条約および一六六号勧告は、家族責任や妊娠を解雇の理由とすることを禁止しています。特に、一五八号条約では、「出産休暇中の欠勤」も解雇の正当な理由に該当しないことが明記されています。この点は、一一九号勧告にはなかった規定であり、女性労働者に対する追加的な保護が強化されています。
年齢や公民的義務に起因する解雇の規制
一六六号勧告第5項と第6項では、解雇が正当な理由とならない理由として、年齢(引退に関する国内法と慣行に基づく)や、公民的義務(義務兵役など)に起因する欠勤を挙げています。
疾病や負傷による欠勤
一五八号条約第6条第1項は、疾病や負傷による欠勤を解雇の正当な理由にはならないことを明記しています。しかし、第2項では、一定の制限が認められており、疾病や負傷による欠勤に対する解雇が特定の状況下で認められる場合があることも示唆されています。
手続的保障
解雇に関連する手続き的保障の規定は、労働者が不当解雇から守られるための重要な要素です。これらの保障が提供されることで、労働者の権利が強化され、解雇に関する不当な手続きが防がれます。
ILO基準では、解雇に対する正当な理由を確立し、特定の事項が解雇の理由として認められないことを明記することで、労働者の権利を守るとともに、労働市場の公正性を確保しています。このような規定の進展は、世界的に受け入れられた解雇の正当性の基準を反映しており、労働者保護の枠組みが確立されつつあります。