投資ルールに関する研究方法について詳述しています。以下に要点をまとめます。
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法文資料の条文読解と相互比較:
- 本稿では、投資ルールに関する主要な論点ごとに、国際協定やその他の法文資料を読み解き、それらの条文を相互に比較することで、具体的な規定の傾向を把握し、分類整理します。
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政策志向の相違の把握:
- 規定の傾向に反映された政策志向の違いを理解するために、特にアジア諸国の外資法や投資受入戦略との対照を行います。
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投資ルールの特性:
- 国際公法としての投資ルールは、政治的・技術的な文言交渉の結果であり、高度に抽象化されているため、意図的な解釈余地が多く含まれています。このため、実質的な政策選択は単なる文言の解釈からは明確に特定しにくいとしています。
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経済的現実に基づく実質的な政策選択:
- 投資ルールの適用対象である経済的現実、特に外資法や投資戦略の具体的な問題状況に基づいて、初めて実質的な政策選択肢の違いを認識できると考えています。
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動態的解釈的手法:
- 本稿の方法論は、上述のような動態的な解釈手法に基づいています。この手法によって、投資ルールの背景にある政策的な選択肢やその変遷を探ることが目的とされています。
国際協定における「投資」の定義について、狭義に設定する例と広義に設定する例の2つの観点から検討されています。以下に要点をまとめます。
1. 国際協定の規定傾向
- 投資の定義は、国際協定によって異なるアプローチが取られており、主に狭義の設定と広義の設定に分けられます。
2. 狭い射程の設定例
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WTO/TRIM協定 (1条):
- 「モノ貿易に関連する投資措置」に対象を限定しており、抽象的な定義規定は存在しません。
- 主に製造業等の直接投資を想定している。
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WTOのGATS (1条):
- 「公共サービスを除くすべての分野におけるすべてのサービス」という広範な定義を採用し、サービス業の投資活動も含まれています。
- これにより、WTOの枠組み全体として将来的に射程を拡張する可能性があります。
3. 広い射程の設定例
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NAFTA (北米自由貿易協定):
- 「投資家」と「投資」を全般的に対象としながら、具体的な概念規定は設けず、投資対象資産を網羅的に列挙しています (1139条)。
- 特に司法・社会福祉・教育などの公共サービス分野への投資も明示的に含まれている点が特徴です。
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OECD/MAI草案:
- 投資家を締約国の全ての自然人または法人と定義し、「投資」を「投資家が直接または間接に所有ないし管理するすべての資産」としています。
- NAFTAよりも広範な定義を採用していますが、あまりにも漠然としており、例外や要件の明示が不足しているという課題があります。
4. 総括
- これらの例を通じて、国際協定における投資の定義には、狭義にとらえた場合と広義に拡張した場合があり、それぞれの定義が投資ルールの適用範囲や内容に影響を与えることが示されています。また、国際的な文脈での協議や合意形成の重要性が強調されています。
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外資に対する待遇規定の種類とその対象について、国際協定における規定傾向を検討しています。以下に要点をまとめます。
1. 待遇規定の種類
外資の待遇に関する主要な規定として、以下のような種類が存在します。
① 内国民待遇 (National Treatment)
- 例: WTO/TRIM協定 (2条):
- 「内国民待遇」のみを規定している。
- これは、外国の投資者に対して国内の投資者と同等の待遇を保証するものであり、絶対的基準である無差別原則に相当します。
- OECD資本自由化コード (1961年):
- 内国民待遇を前面に掲げつつ、一般的平等待遇にも言及しています。
② 最恵国待遇 (Most Favored Nation Treatment)
- 例: 二国間投資協定 (BITs):
- 特にアジア諸国において、最恵国待遇のみを規定する傾向が見られます。
- これは、一国が他国に与えた優遇措置を他の国にも自動的に適用することを意味します。
③ 最恵国待遇および漸進的内国民待遇
- 例: WTO/GATS (2条・17条):
- 「最恵国待遇」を無条件で規定しながら、「内国民待遇」については各国の特定の条件に従った漸進的な適用が認められています。
- これは、国によって異なる国内政策に対する調整を可能にします。
2. 投資自由化における課題
- 投資は外国主体が国内経済に参入するため、国境を越えた貿易関係とは異なり、各国の多様な国内政策との調整が必要です。
- 待遇規定は、国際的な貿易自由化のルールとして定着していますが、投資自由化の文脈では単純には当てはまらない点が強調されています。
3. 総括
- 投資に関する待遇規定は、国際協定によって多様であり、内国民待遇と最恵国待遇の組み合わせや単独の規定が存在します。
- 各国の政策に基づいて調整が求められるため、単なる貿易自由化とは異なる複雑さがあります。これらの規定は、国際的な投資環境の整備において重要な役割を果たしています。