「法務業務における非常事態に対処する」ためのビジネス英会話の例とその日本語訳です。難しい英語表現の解説も含めています。


会話例

Lawyer A (Head of Legal Department):
"We’ve encountered an urgent legal matter. There’s a breach of contract claim against us that requires immediate action."
「緊急の法的問題が発生しました。私たちに対する契約違反の申し立てがあり、早急な対応が必要です。」

Lawyer B (In-house Counsel):
"Understood. Have we reviewed the terms of the agreement thoroughly? We need to assess if the claim holds any merit before we proceed."
「了解です。契約の条項を十分に確認しましたか?対応に入る前に、その申し立てが正当なものかどうかを評価する必要があります。」

Lawyer A:
"I’ve already reviewed it. It seems the other party is alleging a material breach, specifically regarding our non-performance in the last delivery."
「すでに確認済みです。相手方は重大な契約違反を主張しており、特に最後の納品における履行義務の不履行を問題にしているようです。」

Lawyer B:
"In that case, we should first issue a formal response denying the allegations and highlight the force majeure clause in the contract. Did the delay result from unforeseeable circumstances?"
「その場合、まずは正式に申し立てを否定する回答を発行し、契約にある不可抗力条項を強調すべきです。遅延は予期できない状況が原因でしたか?」

Lawyer A:
"Yes, the delay was due to unforeseen supply chain disruptions caused by the recent natural disaster."
「はい、遅延は最近の自然災害による予期しないサプライチェーンの混乱が原因です。」

Lawyer B:
"Then we should draft a legal memorandum outlining our position and send it to the opposing counsel. We may also want to consider initiating a settlement discussion, given the circumstances."
「それでは、私たちの立場を説明する法的メモランダムを作成し、相手方の弁護士に送るべきです。また、状況を考慮して和解交渉を開始することも検討すべきかもしれません。」

Lawyer A:
"Agreed. Let’s also prepare for possible litigation. Could you draft a litigation strategy, outlining key defenses and potential counterclaims?"
「同意します。また、訴訟の可能性にも備えましょう。主要な抗弁と反訴の可能性を概説する訴訟戦略を作成してもらえますか?」

Lawyer B:
"Of course. I’ll start drafting a comprehensive strategy right away. Also, should we inform the executive team about the possible legal risks?"
「もちろんです。すぐに包括的な戦略を作成します。また、法的リスクの可能性について経営陣に報告するべきでしょうか?」

Lawyer A:
"Yes, please draft a brief for them as well. We’ll need their approval for any major settlement offers."
「はい、彼らに向けた簡潔な報告書も作成してください。和解金額の提示には彼らの承認が必要です。」


難しい英語表現の解説(15点以上)

  1. Breach of contract claim
     「契約違反の申し立て」:契約の条項に違反したことに関する法的な申し立て。

Contract claim(契約請求)とは、契約に基づいて相手方に対して法的な権利や義務の履行を求める要求のことを指します。主に、契約違反が発生した際に、損害賠償や特定のパフォーマンス(義務の履行)を求めるために提起されます。

具体例:

  • Breach of Contract Claim(契約違反の申し立て):契約上の義務が履行されなかったり、契約内容に反する行為が行われた場合、契約違反として法的に請求するもの。
  • Claim for Specific Performance(特定履行請求):相手方が契約に従った具体的な行為(例:商品納品やサービス提供)を履行するよう強制する請求。

ビジネス英会話例:

Lawyer A: "We received a contract claim from the client alleging that we didn’t fulfill our obligations under the service agreement."
「顧客から、サービス契約に基づく義務を果たしていないとの契約請求を受け取りました。」

Lawyer B: "In response to this contract claim, we need to evaluate whether we’ve breached any terms and prepare a defense strategy."
「この契約請求に対して、我々が契約の条項に違反したかどうかを評価し、防御策を準備する必要があります。」

難しい表現の解説:

  1. Obligations under the contract(契約に基づく義務):契約に明示された義務。
  2. Breach(違反):契約条項を破ること。
  3. Defense strategy(防御策):訴訟や請求に対する法的な反論・対応策。

 

  1. Immediate action
     「即時の対応」:すぐに行動する必要がある状況。

  2. Holds any merit
     「正当な理由がある」:申し立てや訴えに法的な根拠があるかどうかを判断する際に使われる。

Holds any merit(正当な理由がある)という表現は、主張や申し立てが法的、事実的に根拠があるか、正当性があるかどうかを問う際に使われます。特に、法的な場面では、訴訟や請求が有効であるかどうかを評価する文脈でよく使われます。

例文:

  • "Before we take any further steps, we need to determine if the plaintiff's claim holds any merit."
    「さらなる対応を行う前に、原告の主張に正当な理由があるかどうかを判断する必要があります。」

  • "The court dismissed the case as the claim did not hold any merit."
    「その訴訟は、主張に正当な理由がないとして裁判所によって却下されました。」

解説:

  • Merit:この単語自体には「価値」や「長所」という意味がありますが、法的文脈では、主張が「法的に有効であるか」や「根拠があるか」を指す場合に使われます。
  • Holds any merit:何かしらの正当性や根拠があるかどうかを評価する際に使われる定型表現。
  1. Material breach
     「重大な契約違反」:契約の根本的な条項に違反し、契約全体の履行に影響を及ぼす違反。

  2. Non-performance
     「履行義務の不履行」:契約で求められた行為を行わなかったこと。

Non-performance(履行義務の不履行)は、契約に基づいて約束された義務や行為が実行されなかった、または十分に履行されなかったことを指します。これは、契約違反(breach of contract)の一種として扱われ、非履行の結果として、法的な損害賠償請求や契約解除が求められる場合があります。

例文:

  • "The non-performance of the supplier has caused significant delays in our project."
    「供給業者の履行義務の不履行が、私たちのプロジェクトに大幅な遅延を引き起こしました。」

  • "Non-performance of the contractual obligations may lead to legal consequences, including penalties or termination."
    「契約義務の不履行は、罰則や契約解除などの法的結果を招く可能性があります。」

解説:

  1. Performance:契約や義務を実行・履行することを指します。反対に、non-performanceはそれを実行しない、または不十分に行うことを意味します。
  2. Obligations:契約において、当事者が果たすべき義務や責任。
  3. Legal consequences:不履行に対する法的な結果、罰則や訴訟リスクなどが含まれます。
  1. Force majeure clause
     「不可抗力条項」:予期し得ない災害や事故により契約が履行できない場合、責任を免れる条項。

  2. Unforeseeable circumstances
     「予期し得ない状況」:事前に予測できない事象。

  3. Issue a formal response
     「正式な回答を発行する」:法的に有効な公式の返答を行う。

  4. Deny the allegations
     「申し立てを否定する」:相手側の主張を認めず、反論する。

The allegations(申し立て、主張)は、ある事実や行為について相手が不正を行ったと主張する際に使われる表現です。特に法的な文脈でよく使われ、まだ証明されていない疑惑や訴えを指します。裁判や訴訟の初期段階で、原告が被告に対して行う非難や主張のことです。

例文:

  • "The company denies all the allegations made by the plaintiff."
    「その会社は、原告が行ったすべての申し立てを否定しています。」

  • "We need to gather evidence to refute the allegations against our client."
    「我々のクライアントに対する申し立てを反論するために証拠を集める必要があります。」

解説:

  1. Allegation:証拠がまだ提示されていない段階での主張や疑惑。
  2. Deny the allegations:申し立てを否定するという意味で、相手側の主張が根拠がないと反論する際に使われる表現。
  3. Refute the allegations:申し立てに対して反証を示し、無効であることを証明する。

 

  1. Legal memorandum
     「法的メモランダム」:特定の法的問題に関する立場や分析を記載した文書。

  2. Opposing counsel
     「相手方弁護士」:相手側の法務担当者や弁護士。

  3. Settlement discussion
     「和解交渉」:裁判ではなく、合意を目指すための話し合い。

Settlement discussion(和解交渉)は、訴訟や紛争の当事者間で、裁判に至る前に合意に達するために行われる交渉を指します。この交渉は、法的手続きのリスクやコストを避け、当事者が合意の形で問題を解決することを目的としています。

例文:

  • "Both parties have entered into settlement discussions to avoid a lengthy court battle."
    「両当事者は、長期にわたる法廷闘争を避けるために和解交渉を開始しました。」

  • "The settlement discussion has made significant progress, and an agreement may be reached soon."
    「和解交渉は大きく進展しており、間もなく合意に達する可能性があります。」

解説:

  1. Settlement:法的な争いを裁判外で解決するための合意。特に損害賠償や義務の履行に関する条件を取り決めます。
  2. Discussion:ここでは「交渉」や「話し合い」の意味で使われ、和解の条件について話し合うプロセスを示します。
  3. Enter into settlement discussions:和解交渉に入る、つまり当事者間で交渉を開始するという意味で、法的な紛争を早期に解決するためのプロセスです。
  1. Litigation strategy
     「訴訟戦略」:訴訟における防御や主張を計画すること。

Litigation strategy(訴訟戦略)は、訴訟においてクライアントの利益を最大化するために、弁護士や法的チームが策定する一連の計画や方針を指します。この戦略には、訴訟の進め方、法的な主張、証拠の提示方法、交渉のタイミング、裁判における対応などが含まれます。

例文:

  • "We need to carefully plan our litigation strategy to ensure the best possible outcome for the client."
    「クライアントにとって最良の結果を得るために、慎重に訴訟戦略を立てる必要があります。」

  • "Part of the litigation strategy includes determining whether to settle or take the case to trial."
    「訴訟戦略の一部には、和解するか裁判に持ち込むかの判断が含まれます。」

解説:

  1. Litigation:訴訟や法的紛争を指します。通常、訴訟は裁判所での法的な争いを指しますが、広義では調停や仲裁も含まれることがあります。
  2. Strategy:具体的な行動方針や計画。法律分野では、特定の目標を達成するために計画的に展開される手段を指します。
  3. Outcome:訴訟の結果や結論。この文脈では、クライアントにとって有利な結果を指します。
  1. Key defenses
     「主要な抗弁」:訴訟での防御として使われる最も重要な主張。

  2. Counterclaims
     「反訴」:訴えられた側が、逆に相手に対して訴訟を提起すること。

  3. Executive team
     「経営陣」:企業の上級管理職。

  4. Comprehensive strategy
     「包括的な戦略」:あらゆる状況を考慮した全体的な計画。

  5. Brief
     「報告書」:短くまとめた要約書類。