【問題】 あん摩マッサージ指圧師法19条1項が憲法に違反しないかについて検討する。特に、職業選択の自由(憲法22条)及び平等権(憲法14条)との関係が問題となる。
【解説】 まず、あん摩マッサージ指圧師法19条1項は、あん摩マッサージ指圧業の無資格者による業務を禁止するものであり、これは職業選択の自由に対する制約を伴う。また、特定の資格を有しない者に対してのみ業務を禁止することは、平等権との関係も検討が必要である。
職業選択の自由との関係
憲法22条1項は、職業選択の自由を保障するが、この権利は絶対的なものではなく、公共の福祉により制限され得る。したがって、制限が合理的であり、必要かつ適当なものである限り、憲法に違反しないと解される。ここで、あん摩マッサージ指圧業は、人の健康に直接影響を与える業務であり、一定の知識と技術が要求される。従って、無資格者による施術は、国民の健康を害する恐れがあり、その制限は公共の福祉に基づく合理的なものであると考えられる。
この点について、最二小判令和4年2月7日(民集76巻2号101頁)では、同法の目的は国民の健康と安全を守ることであり、無資格者による業務禁止はその目的に合致し、職業選択の自由に対する必要かつ合理的な制約であるとされた。
平等権との関係
次に、憲法14条の平等権との関係が問題となる。無資格者の業務禁止が、資格を持たない者と持つ者の間に差別的な取り扱いを生じさせるため、平等権の侵害が主張されることがある。しかし、業務に必要な知識と技術を保障するために資格を要求することは、正当な区別である。従って、この資格要件が合理的な目的に基づいている限り、憲法14条に違反するものではない。
令和4年の最高裁判決でも、この資格要件は合理的な区別であり、平等権を侵害するものではないと判断された。
【結論】 あん摩マッサージ指圧師法19条1項は、職業選択の自由に対して一定の制約を課すが、国民の健康と安全を保護するという合理的な目的に基づくものであり、公共の福祉による制限として合憲である。また、資格要件に基づく区別は正当であり、平等権を侵害するものではないと考えられる。従って、同条項は憲法22条及び14条に違反しない。