原告適格(処分の相手方に準ずる者)

 

原告適格とは、行政事件訴訟において、訴えを提起することができる資格(適格)を指します。具体的には、処分や行政指導などによって法的な利益を侵害された者が、裁判所に対してその救済を求めるために必要な要件です。一般的には、処分の相手方は原告適格を有しますが、それ以外の者でも場合によっては訴訟を提起することが認められることがあります。このような者を「処分の相手方に準ずる者」と呼びます。

処分の相手方に準ずる者としての原告適格

処分の相手方ではないものの、処分の結果、自己の権利や法律上の利益が直接的に侵害される者も、原告適格が認められる場合があります。これは、処分が広範な影響を及ぼす場合に、第三者がその処分の適法性を争う必要があるためです。

具体例としては以下のようなケースがあります。

  1. 都市計画決定に関する住民訴訟
    住民が自分の居住地に影響を与える都市計画決定の取消しを求める場合、処分の相手方ではないものの、その計画が法律上の利益を侵害する可能性があるため、訴えが認められることがあります。

    • **最判平成5年9月10日判決(美濃加茂市都市計画事件)**では、都市計画の内容が住環境に重大な影響を与える場合、その影響を受ける住民には原告適格が認められるとしました。
  2. 公害訴訟や環境訴訟
    公害によって健康や財産が侵害される可能性がある場合、直接の処分の相手方でなくても、影響を受ける住民や事業者が原告適格を有する場合があります。例えば、大気汚染や騒音被害が発生するような行政処分に対して、周辺住民が訴えを提起するケースが該当します。

法的な根拠と判断基準

日本の行政事件訴訟法では、原告適格について次のように定められています。

  • 行政事件訴訟法第9条1項
    「法律上の利益を有する者は、当該処分の取消しの訴えを提起することができる。」

ここで重要となるのは、「法律上の利益」という概念です。法律上の利益とは、単に経済的な損失や社会的な不利益にとどまらず、法令の趣旨に照らして保護されるべき利益を指します。裁判所は、この「法律上の利益」が存在するかどうかを個別具体的な事案に応じて判断します。

  • 最判昭和53年5月30日判決(白タク事件)
    この事件では、既存のタクシー事業者が、新規参入者の許認可に対して原告適格を主張しました。裁判所は、タクシー事業者の営業利益は法律上の保護に値する利益として原告適格を認めました。

結論

処分の相手方に準ずる者としての原告適格は、処分の影響が法律上の利益を直接侵害する場合に認められます。これは、処分の影響を広範に受ける者や第三者でも、法律上の保護を受ける利益があると認められれば、訴訟を提起することが可能になることを意味します。