実定法の体系
イスラーム実定法は、以下のように神の権利 (haqq Allah)、人間の権利 (haqq al-ibād)、およびその複合領域に分類されます。
神の権利 (Haqq Allah)
- 神事 (‘Ibadat):宗教的義務やジハード(異教徒との戦争)を含む。
- 一定の重罪に対する刑罰:非親告罪に対する刑罰を含む。
- 贖罪:神に対する贖いの義務。
人間の権利 (Haqq al-Ibād)
- 人事 (Mu‘āmalāt):対人間の法的「関係」であり、ほぼ私法に相当する。
- 婚姻、訴訟、預託、遺産などが含まれる。
人間の権利には強行法と任意法があり、例えばハナフィー派における取消不能な離婚後の妻の居住権は、神の権利として強行法に分類されます。
契約法の一般原則
契約法の一般原則には以下が含まれます:
- 有償双務契約 (Al-Mu‘āwadāt Al-Maliyya):売買、賃貸借、雇用契約など。
- 無償契約:使用貸借、寄進財団 (Waqf) など。
契約法では以下のような禁止事項があります:
- 利息 (Ribā):不当な利得の禁止。
- 射幸性 (Gharar):不確実性やギャンブル的要素の禁止。
財産権と用益権
財産法における重要な概念として、物自体 (Ragaba) とその使用利益 (Manfa‘a) の区別があります。物自体の所有権は完全な所有権の移転を含みますが、使用利益は契約の目的となり得るものの、独立した財物とはみなされません。
例として:
- 売買 (Bay‘):目的物の完全な所有権の有償移転。
- 賃貸借と雇用 (Ijāra):使用利益の有償移転。
特殊な契約類型
イスラーム法では、特定の契約類型が慣習や社会的必要性に基づいて正当化されています:
- 永貸借 (Hikr):寄進物件の修繕者が無期限に物件を占有する契約。
- 買戻付売買 (Bay‘ Al-Wafā'):譲渡担保に相当する契約。
土地法
イスラーム法では、農地の虚有権を国家に帰する理論があります。国家の地租を用益地代として正当化し、土地の収益を最大化することを目的としています。この理論に基づいて、理論上の用益権者による土地の譲渡や相続が可能です。
現代の民法典
- エジプト民法典:エジプト民法典では、これらのイスラーム法の原則が反映されています。例えば、先買権 (Shuf‘a) は所有権の取得原因の一つとされていますが、先買権の範囲はイスラーム法学よりも拡大されています。