法学者イブン・シャース(Ibn Ashur)は、20世紀のチュニジアのイスラム法学者であり、法学者、思想家として知られています。本名はムハンマド・アル=ターヒル・イブン・アシュール(Muhammad al-Tahir ibn Ashur)です。彼は1879年にチュニジアのテュニスで生まれ、1969年に亡くなりました。

イブン・シャースは、伝統的なマーリク法学(マーリク・イブン・アンス)を基盤にしつつも、現代の社会や法のニーズに適合するための新しい法学的アプローチを提唱しました。特に、シャリーアの原則を現代の社会や法の枠組みにどう適用するかに焦点を当てました。

彼の最も重要な貢献の一つは、『マアキム・アル・シャリーア』(Maqasid al-Shariah)という著作で、シャリーアの目的や目標(マクサド)を現代の法的論議にどう応用するかを論じた点です。この著作は、イスラーム法学の枠組みを通じて、個々の法的規定や判断を超えてシャリーアの普遍的な目的を探求しようとした点で画期的であり、多くの法学者や思想家に影響を与えました。

また、イブン・シャースは教育者としても知られ、テュニジアのザイットゥーナ大学(Zaytuna University)やカイロのアズハル大学で教鞭を執りました。彼の思想は、イスラーム法学の進化と現代化において重要な位置を占めています。