日本の労働法が大陸法的であり、特にドイツ法から強い影響を受けた理由については、歴史的、文化的、政治的な背景が関与しています。以下にその主な要因を挙げます。

1. 明治維新以降の法制度整備

19世紀後半の明治維新以降、日本は急速な近代化と西洋化を進めました。この際、法律制度の整備が不可欠となり、西洋の法体系をモデルにすることが選ばれました。特にドイツ法は、明治政府が参考にした主要な法体系の一つでした。ドイツ法は詳細で体系的な法典を持ち、これが日本の立法者にとって魅力的だったのです。

2. ドイツ法学者の影響

明治政府は、多くのドイツ法学者を日本に招き、法学教育や法制度の整備に協力を仰ぎました。例えば、グスタフ・アドルフ・クライシュマンなどが日本で法学を教え、その影響を与えました。これにより、ドイツ法の原則や概念が日本の法制度に深く根付くことになりました。

3. 労働法制定時の国際的影響

第二次世界大戦後、日本は新たな労働法の制定に迫られました。この際、アメリカの影響は否定できませんが、基本的な法体系や理念の多くは既存の大陸法的枠組みに基づいていました。特に、戦後の復興期における社会的安定を図るために、労働者の権利保護が強調されるドイツ法的なアプローチが採用されたのです。

4. 法の安定性と継続性

日本の法体系は、一度採用された枠組みが長期にわたって維持される傾向があります。ドイツ法を基にした法体系が確立された後も、その基本的な枠組みや理念が大きく変わることはなく、継続的に発展してきました。これは、法の安定性や継続性を重視する日本の法文化の特性でもあります。

5. 欧州法との親和性

欧州、特にドイツ法は、社会国家原則や労働者保護の理念を強調しており、これが日本の社会的価値観と親和性が高かったことも影響しています。日本社会は、集団主義や共同体の価値を重視する傾向があり、これがドイツ法の理念と一致していました。

以上の要因により、日本の労働法はドイツ法の影響を強く受けた大陸法的な性格を持つようになりました。この背景には、歴史的な要因や法文化の特性、社会的価値観の一致が大きく関与しているのです。