「アラブの春」とは、2010年末から2011年にかけて、中東および北アフリカ地域で起こった一連の抗議運動や革命を指します。この動きは、各国の政治体制や社会体制に大きな変革をもたらしました。モロッコでもこれらの動きの影響を受け、一部の市民団体や若者たちが変革を求める抗議活動を行いました。

モロッコ国王モハメド6世は、「アラブの春」の影響を受け、2011年3月9日に演説を行い、改革に向けた動きを表明しました。この演説の内容とその後の対応により、モロッコは他のアラブ諸国とは異なるアプローチを取ることになりました。

具体的な対応として、モロッコ国王は以下のような改革を進めました。

  1. 憲法改正: 国王は2011年3月に新しい憲法の草案を発表し、7月1日に国民投票で承認されました。この憲法改正により、国民の権利と自由が強化され、議会の権限が拡大されました。また、司法の独立が強化され、国王の権限も一部制約されました。

  2. 法制度の改革: 憲法改正に続いて、民法や刑法などの法制度も見直されました。特に、女性の権利の強化や市民の自由の保護に重点が置かれました。モロッコの民法である「Moudawana」(モロッコ家族法)は2004年に大幅に改正されており、女性の権利向上に大きな進展が見られました。

  3. 政治参加の促進: 新しい憲法は、政党や市民社会の役割を強調し、民主的なプロセスへの参加を奨励しました。また、地方自治の強化や分権化を通じて、市民の政治参加を促進しました。

これらの改革により、モロッコは「アラブの春」による混乱を最小限に抑え、平和的な変革を進めることに成功しました。国王の主導によるこれらの改革は、モロッコの安定と発展に寄与していますが、一部の人々はさらなる改革や民主化を求める声を上げています。