オスマン民法典は通称「メジェッレ(Mecelle-i ahkâm-i adliye)」として知られています。以下はその構成と内容についての要点です:

  1. 通称「メジェッレ」:

    • オスマン民法典は一般に「メジェッレ」と呼ばれています。これは「法規定集」を意味します。
  2. 発布時期と構成:

    • オスマン民法典は1870年から1877年にかけて発布され、全16章に1851条が含まれています。
    • ただし、条文は近代的な形式に整えられていないことが指摘されています。
  3. 法学的基盤とタハイユル(takhayyur)による立法:

    • オスマン民法典はハナフィー派シャリーアを基盤にしており、シャリーア法学の教義に基づいています。
    • タハイユル(takhayyur)は、伝統的な法学的原則を適用する際に、現代の状況に合わせて学説を選択する立法手法を指します。
  4. 債権契約法中心:

    • オスマン民法典は、債権契約法を中心に規定されています。債権関係や契約に関する法的事項が重視されています。
  5. 物権法と「オスマン土地法典」(1858):

    • 物権法に関しては、「オスマン土地法典」(1858)が関連しています。土地の所有や転売に関する法的事項が取り扱われています。
  6. 家族法(ムスリム)とシャリーア適用:

    • イスラム法(シャリーア)に基づく家族法(ムスリム)に関しては、シャリーア法廷による適用が規定されています。
  7. 家族法(非ムスリム)とミッレト法廷:

    • 非ムスリムの家族法に関しては、各非ムスリム共同体(ミッレト)ごとに異なる法が適用され、それぞれのミッレト法廷による法適用が規定されています。
  8. ミッレト:

    • ミッレトは、非ムスリムの共同体を指し、各ミッレトは独自の法的規範を有していました。

オスマン民法典は、オスマン帝国時代の法制度の一部であり、イスラム法(シャリーア)を基盤にしていたが、一方で近代的な法的要素も含んでいます

 

『メジェッレ』(オスマン民法典)からの一連の条文例です。以下はいくつかの重要な条文を抜粋して解説します:

  1. 第1条:イスラーム法学とその分類

    • イスラーム法学は、儀礼法規範と現世に関わる法規範に大別される。
    • 儀礼法規範は来世に関するものであり、現世に関わる法規範は婚姻法規範、財産法規範、刑罰法規範に分類される。
    • 社会の秩序は、夫婦の結合と協力と連携に基づくものであり、これらの法に従う必要がある。
  2. 第2条:行為の意図に従う

    • 行為は、その意図に従うべきである。
  3. 第5条:原則の推定の原状の継続

    • 何事も原則としてその原状の継続の推定が及ぶ。
  4. 第14条:啓示の明文が存在する事項についてのイジュティハードの禁止

    • 啓示の明文が存在する事項については、イジュティハード(独自の法的推論)は許されない。
  5. 第17条:禁止によって生じる困難は緩和を導く

    • 禁止によって生じる困難は、禁止の緩和を導く。
  6. 第21条:必要不可避性の免責

    • 必要不可避性(ダルーラ)は、禁止行為の免責となる。
  7. 第32条:必要性と買戻約款付売買の許可

    • 必要性は、普遍的か特殊的かにかかわらず、必要不可避性に転化しうる。例として、買戻約款付売買の許可が挙げられている。
  8. 第36条:慣習は法的判断を導きだす

    • 慣習は法的判断を導きだすものであり、シャリーアの法的判断を定立する規範とされる。
  9. 第175条:申込みと承諾の本来の意図と意思実現行為売買

    • 売買は合意を示す現実の交換によっても成立する。これは意思実現行為売買と呼ばれる。
    • 例として、申込みと承諾の発話がないままに売買が成立する場合が挙げられている。

これらの条文は、イスラム法学の原則や法的取引に関する規定を含んでおり、『メジェッレ』の法的基盤を反映しています。