被用者の分類については、特に専属被用者と独立被用者の区別が重要です。これに関連して、3つの異なる立場が存在します。
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専属被用者と独立被用者の定義:
- ハナフィー派とシャーフィイー派の見解: 一部の法学者は、独立被用者とは複数の人々から仕事を引き受ける者であり、専属被用者とは一人の者から仕事を引き受ける者を指すと定義しています。
- ジュワイニーの見解: 独立被用者はズィンマ(契約)において仕事の完成を義務付けられた者であり、自ら労務に携わることも、他人に仕事を請け負うこともできる。専属被用者は雇用契約がその者自身に結びついており、雇用者に対してその労務を提供する義務を負っているとされます。
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賃金請求権の発生要件に着目:
- イブン・マーザによれば、独立被用者とは、自らを引き渡すことではなく、仕事の完成によって賃金を請求する者を指し、専属被用者は自らを引き渡すことと時間の経過によって賃金を請求する者を指すとされています。
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イブン・ハビーブの見解:
- 職人が雇われた場合、彼ら自身が労務を提供することが約定されない限り、それは保証された労務であり、そのような職人は他人を使役することができると述べています。この立場では、独立被用者と専属被用者の区別は、別段の約定がない限り一致することになります。
これらの立場は相容れないものではなく、賃金の請求権や契約内容によって被用者がどのカテゴリに該当するかが異なる角度から考えられています。
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2.2 専属被用者の賃金請求権と債務不履行に関する規定について、異なる学派の立場を以下にまとめます。
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シャーフィイー派:
- 専属被用者は、自らを引き渡すことと、実際には労務を提供しなくても、それを実行できたことにより賃金を請求できるとされる。
- 債務不履行については、例えば特定雇用者が逃げた場合、契約は解除され、雇用者は新たな被用者を雇う費用を被用者から請求できる。
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ハナフィー派:
- 専属被用者とは、自らを引き渡すことと時間の経過によって賃金を請求する者を指す。
- 被用者が労務の場から離れ、昼間の時間の1/4だけ雇用の目的たる労務を行わなかった場合、約定賃金の1/4が減額されるとする立場がある。
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マーリク派:
- 賃金の支払いが雇用者にとって過酷である場合には、契約の解除権を与えたり、賃金支払い義務を免除する可能性がある。
- 被用者の債務不履行には雇用契約に固有の規定が適用され、被用者が労務を放棄した場合、雇用者は滅失した使用利益の損害賠償を請求できる。
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ハンバル派:
- 専属被用者は、雇用者が彼を使役することができるようになった場合、働かなくても時間の経過とともに賃金を請求できると述べられている。
- 被用者の債務不履行については、特定雇用の場合は契約解除が可能であり、不特定雇用の場合は新たな被用者を雇う費用を請求できる。
また、対象物の滅失や損傷に関しては、ハナフィー派、マーリク派、ハンバル派では専属被用者の占有が預託占有であるとして、損害の責任が発生する条件が具体的に定められています。