アン・ロー(Anne Roe、1904年-1991年)は、アメリカの心理学者であり、キャリア理論家です。彼女は特に職業選択の動機や人格の影響を研究し、自己概念や環境の要因を考慮したキャリア理論を提唱しました。

ローは、人々がなぜ特定の職業を選択するのかについての研究を行い、その背後にある動機を探求しました。彼女の研究によれば、人々の職業選択は、自己の興味や能力、人格特性、および環境の要因によって影響を受けるとされています。

また、ローは人格の特性が職業選択に関与することを強調しました。彼女は、人々が6つの一般的な職業グループ(現実志向、知的志向、芸術志向、社会志向、事業志向、定型志向)の中でどのような職業を選択するかは、その人の人格特性に関連しているという仮説を立てました。

さらに、ローは自己概念(自己のイメージや自己の認識)の重要性を強調しました。自己概念は、個人の職業選択やキャリア発展に影響を与えるとされており、自己の価値観や興味、能力に合った職業を選択する傾向があるとされています。

ローのキャリア理論は、人格特性や自己概念を考慮した職業選択の理論として注目されており、キャリアカウンセリングや職業指導の分野で広く活用されています。

 

キャリア理論家とは、職業選択やキャリア形成に関する理論を提唱する研究者のことを指します。キャリア理論家は、個人のキャリア形成に影響を与える要因や、キャリア発展の過程や段階、キャリアアイデンティティの形成などについて研究を行い、それらを体系化した理論を提唱します。

代表的なキャリア理論家には、フランク・パーソンズ(Frank Parsons)、ドナルド・スーパー(Donald Super)、アン・ロー(Anne Roe)、ジョン・ホランド(John Holland)などがいます。彼らは、それぞれ独自の観点からキャリア形成に関する理論を提唱し、その理論を基にキャリア教育やキャリアカウンセリング、職業指導などの分野で活躍しています。

キャリア理論家たちは、個人が自己の価値観や興味、能力に合わせた職業を選択するための指針を提供し、キャリア形成に関する問題に対して解決策を提示しています。彼らの研究成果は、個人の職業選択やキャリア形成に影響を与える要因を理解する上で重要な役割を果たしています。

 

フランク・パーソンズ(Frank Parsons、1854年 - 1908年)は、アメリカの社会改良家、職業指導者、キャリア理論家として知られています。彼は、職業選択に関する初期のキャリア理論を提唱し、職業指導の分野において先駆的な業績を残しました。

パーソンズは、個人が自己の興味や能力、価値観に合った職業を選択するためには、情報や指導が必要であるという考えを持ちました。彼は「キャリアカウンセリング」という用語を初めて使い、個人の自己理解や職業情報の提供を通じて職業選択を支援する方法を開発しました。

また、パーソンズは「真の職業」という概念を提唱し、個人が自己の興味や能力に合った職業を選択することの重要性を強調しました。彼は、自己の興味や能力に合った職業を選択することが、個人の幸福や社会的な適応につながるという考えを持ちました。

また、パーソンズは、職業選択において個人の性格や能力、職業の要求との適合性を考慮するアプローチを取り入れ、職業指導のプロセスを体系化しました。彼の理論は、のちのキャリア理論家たちによって発展され、現代のキャリアカウンセリングの基礎となる考え方を確立しました。

フランク・パーソンズの業績は、職業選択やキャリア形成に関する理論や実践に多大な影響を与えており、現代のキャリアカウンセリングやキャリア教育の分野においても引き続き重要な位置を占めています。

 

ドナルド・スーパー(Donald Super、1910年 - 1994年)は、アメリカの教育心理学者、職業指導者、キャリア理論家です。彼は、職業選択やキャリア形成に関する理論を提唱し、キャリア理論の中でも特に影響力のある研究者の一人として知られています。

スーパーは、職業形成の過程を「生涯発達における役割の演習」というコンセプトで捉え、個人が自己の価値観や能力、興味、性格に合った職業を見つけるためには、自己理解や職業情報の収集、職業の選択と発展を通じて自己実現を達成する必要があると考えました。

スーパーは、職業形成に関して、5つの段階のプロセスを提唱しました。それは、(1)探索段階、(2)確認段階、(3)決定段階、(4)調整段階、(5)成熟段階です。これらの段階には、個人が自己の興味や能力、価値観に合った職業を選択するために必要なスキルや行動が含まれています。

また、スーパーは、職業のカテゴリーに応じて、人格タイプを分類するホランドの職業興味分類(RIASEC)を拡張し、より個人の職業選択に関する理解を深めるための枠組みを提供しました。

スーパーのキャリア理論は、職業選択やキャリア形成に関する研究や実践に多大な影響を与え、現代のキャリアカウンセリングやキャリア教育の分野においても重要な位置を占めています。

 

ジョン・ホランド(John L. Holland、1919年 - 2008年)は、アメリカの心理学者であり、キャリア理論家として知られています。彼は、職業興味と職業選択の関係についての研究を行い、職業興味のタイプに基づいた職業選択理論を提唱しました。

ホランドは、人々の興味を6つの異なるタイプに分類し、それぞれのタイプに対応する職業環境を特定しました。これに基づいて、ホランドは「ホランドの職業興味分類(RIASEC)」として知られる分類を提案しました。それによれば、以下の6つの職業興味タイプがあります。

  1. 現実型(Realistic): 物や動植物に興味を持ち、実用的で体力を使う職業を好む。
  2. 知的型(Investigative): 問題解決や研究に興味を持ち、科学的な職業を好む。
  3. 社会型(Social): 人間関係を重視し、他者を支援する職業を好む。
  4. 組織型(Conventional): 規則や秩序を重視し、オフィスや事務作業を好む。
  5. 芸術型(Artistic): 創造性や表現に興味を持ち、芸術的な職業を好む。
  6. 言語型(Enterprising): リーダーシップや影響力を持つ職業に興味を持ち、人を動かすことができる。

ホランドの職業興味分類は、個人の興味や傾向を踏まえて職業選択を支援するために広く使われており、キャリアカウンセリングや職業適性診断などで活用されています。また、ホランドの理論は、個人の職業選択やキャリア形成に関する研究や実践において重要な基盤を提供しています。