第1章 序論 1.1 研究背景 1.2 研究目的と問題意識 1.3 研究方法とデータ収集 1.4 研究の構成
第2章 アラブの春の起源と展開 2.1 アラブ世界の政治・社会的背景 2.2 チュニジア革命 2.3 エジプト革命 2.4 リビア内戦 2.5 シリア内戦 2.6 アラブの春の影響
第3章 アラブの春と法の変化 3.1 アラブ諸国の法の変化の背景 3.2 憲法の変化 3.3 刑法・民法の変化 3.4 人権と法の変容
第4章 国際社会とアラブの春 4.1 国際社会の反応 4.2 国際社会と法の変容 4.3 アラブの春と国際法
第5章 結論 5.1 研究のまとめ 5.2 今後の展望
参考文献
付録
「アラブの春」は、多くの中東・北アフリカ諸国で民主化や社会的変革を求める抗議活動が盛んになった2010年代初頭の出来事を指している。その中でも、チュニジアは「アラブの春」を象徴する国の1つであり、2011年に起こったジャスミン革命で長期政権のベン・アリ大統領が失脚したことから、民主化や法治主義を掲げた改革が進められている。一方で、モロッコは「アラブの春」にあまり影響を受けず、王政復古以降も相対的に安定しているとされる。しかし、モロッコでも政治的・社会的な変化の波はあり、憲法改正や法制度の見直しが進められている。
このように、中東・北アフリカ地域における政治・社会の変化は法制度にも影響を与えており、特にイスラーム法や西洋法に関しては、その変容が見られる。本論文では、チュニジアとモロッコにおけるイスラーム法と西洋法の変容を、政治・社会変動という観点から分析することを目的としている。具体的には、憲法や刑法・民法などの法制度の変遷を追いながら、イスラーム法と西洋法がどのように受容・変容していったのかを明らかにし、その背景にある政治・社会的な要因を考察する。また、国際的な金融活動の監視やテロ資金対策を担うFATF(金融活動作業部会)の存在も取り上げ、イスラーム法と経済刑法の関係についても分析する。
第2章は「イスラーム法と西洋法の歴史的背景」を扱っています。
この章では、まずイスラーム法と西洋法の概要を解説し、その後、両者の交流についても触れています。具体的には、イスラーム法の発展やコーランやハディースに基づく法律の特徴、西洋法の歴史的背景や近代法の成立について説明しています。また、イスラーム法と西洋法の交流については、古代ギリシャ・ローマ法の影響や、十字軍の時代における西洋法の伝播、近代以降におけるイスラーム国家の法律改革による西洋法の導入などを取り上げています。
第3章は「チュニジアにおける法の変遷」について論じた章です。チュニジアの歴史的背景や憲法、刑法・民法、そしてイスラーム法に関する変遷を分析しています。具体的には、チュニジアが独立した1950年代から、ハビーブ・ブルギーバ大統領が政権を握った1980年代までの時期において、憲法や刑法・民法が改正された経緯、そして1980年代以降のイスラーム法の変容について論じています。政治社会変動に伴う法変化を考察する上で、チュニジアの事例は重要な示唆を与えると考えられます。
第3章では、チュニジアとモロッコにおける経済刑法の歴史と現状について分析されています。まず、両国の経済刑法の歴史的背景について解説し、その後、現在の経済刑法の制度的枠組みや具体的な犯罪行為について詳しく説明されています。また、経済刑法におけるイスラーム法の影響や、FATFの勧告に基づく両国の法改正についても論じられています。さらに、チュニジアとモロッコの経済刑法の比較分析も行われています。