女将の秋穂は釣り好きの亭主と一緒に海鮮居酒屋を営んでいた。

亭主が急死してからは、秋穂1人で居酒屋を続けていた。

山口恵以子さんの他のシリーズを思い浮かべてしまう料理に常連さんとのやり取りに、読んでいて温かい気持ちになる。

でもこの居酒屋「米屋よねや」には秘密があって・・・





亭主の遺した魚拓は店の中にあるので、お客さんは海鮮が出るかと思うのだが、釣りができない秋穂が出す料理は家庭料理のような温かい料理。

初めて訪れたお客さんには、必ず海鮮料理屋でない事を伝えるのだが、料理が美味しいので誰もが満足して、自分の悩みをつい女将の秋穂に話してしまう。

美味しい料理と気安い雰囲気をまとう秋穂を前にすると、所詮初めての場所だから…と心の内を出してしまう気持ちはわからなくはない。


秋穂と話すことで心が軽くなり、悩みから解放された客たちは、前に進むことができる。

秋穂に礼を言うために再び訪れるのだが、そこには秋穂の居酒屋はない。

仕方なく近くにある焼き鳥屋で訪ねると、そこに居合わせている人たちから、秋穂は30年前に亡くなっていることを聞かされる。


その場に居合わせた人たちは、米屋の常連の子どもやご近所の人たち。

彼らは亡くなったはずの秋穂が、米屋と共に蘇った事を知っても、人の良い秋穂の性格を知っているせいか、怖がることもしない。


初見の客たちもまた、秋穂が亡くなっている事を知った時、一瞬はゾクッとするものの、秋穂に感謝をするのだった。


一期一会


この言葉が幾度となく登場する。

一度きりの出会いだからこそ、話せる相手もいる。

その一度の出会いが、その後の人生に大きく影響を与えることもある。