山口惠以子さんの本は、私が勝手においしいシリーズ3部作と命名している『食堂のおばちゃん』『婚活食堂』『幽霊居酒屋』は、私が大好きな作品たちである。

 

山口惠以子さんの作品は、シリーズ本以外にも単行本はでていて、同じように食に関する小説であり、読みやすく大好きな作品でもある。

 

その山口惠以子さんの単行本の1つ。

 

専業主婦だった茜は、50歳の時に私立病院の院長をしている夫から離婚を切り出される。

法律事務所に勤める娘の七は、父親から慰謝料や財産分与として当面のお金を受け取って母の茜と一緒に家を出る。

茜の実家はもうないが、昔馴染みもいることから、かつて実家があった地域へ住み始める。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茜はパウンドケーキを作るのが得意だったのだが、縁あってパウンドケーキを馴染みの喫茶店で取り扱ってくれることになり、七の助けもあり、あれよあれよという間に事業として拡大していく。

 

 

 

50歳というと、そろそろ老後について考え始める時期でもある。そんな人生の終焉というには早すぎるが、特別若いという年齢でもない時に、離婚という大きな人生の転機が訪れた茜。

何をどうして良いかがわからなかったのは当然かもしれない。

彼女の運が良かったのは、たまたま娘の七が弁護士事務所で働いていたため、法律に詳しかったこと。七のおかげで慰謝料ももらえたため、当面の生活に困ることはない。

そして第二の生活拠点を、馴染みのある地域にしたこと。

実家はなかったが、幼馴染や顔なじみが近くにいるお陰で、流れにスムーズに乗ることができた。

 

流れがスムーズな時というのはある。

この波にうまく乗っていこう、という波。

逆にこの波に乗ったら船が難破するのではないかというような、一見穏やかだが嵐の予兆を感じさせるような波もある。

茜は専業主婦ではあるが、院長婦人として裏方に徹していた経験から、自分が思っている以上に、人を見る目や世間の流れなどの勘が働きやすかったのかもしれない。

 

サーフィンはやったことはないが、人生には波があって、その波をうまく乗りこなすには、時には冒険心ばかりでなく、波を見送ったり、ただ波に身を任せることも長く波に乗るコツなのかもしれない。