しばらく、
チェコでの交渉ごとのエピソードと
シュヴァンクマイエル監督のエピソードを
書かせていただいて
「トルンカとポヤルの物語」のスピンオフのお話を
書くと言って
なかなか書けず、失礼いたしました。
チェコアニメの創設者
イジー・トルンカと
さらに発展させた
ブジェチスラフ・ポヤルの物語を
連載で書かせていただいておりました。
以下が今まで書かせていただきました
エピソードです。
第１回目↓
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12759991751.html
第二回目「君の退職届も出しておいた」↓
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12760173426.html
第１２回目「ポヤルの新しいパートナー」
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12767008539.html
最終回「後継者の育成」
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12767986116.html
以上のように１３回に分けて
イジー・トルンカ（１９１２〜１９５７）と
ブジェチスラフ・ポヤル（１９２３〜２０１２）
が築き上げた
チェコの人形アニメの物語を
書かせていただきました。
今回は
トルンカとポヤルに関わった人について
書かせていただきます。
その名は
ヴァーツラフ・ベドジフ（１９１８〜２００９）
アマールカの作者として有名な他
チェコの大人気アニメ番組
ヴェチェルニーチェク（おやすみアニメ）の
創設に尽力し、
新しい監督や美術デザイナーの発掘、育成、
そして
監督や美術を手掛けたほか、
アニメの企画、制作、
テレビ番組の企画、制作などを
手掛け、
関わったアニメ作品の本数は２００以上という
裏方中の裏方という”大フィクサー”。
業界に属する多くの関係者は
ベドジフには頭が上がらない人物ばかりだったそうです。
そんなベドジフも
戦後、
１９４５年に創設された
プラハの国営のアニメスタジオに
トルンカ率いる制作チームの
一員として参加していました。
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12759991751.html
↑その頃のお話です。ご参考に…
そして、
トルンカチームは
最初の一年目に
４本の短編アニメを作り
そのうちの一つが
カンヌ国際映画祭で
最優秀賞を取り、
”チェコアニメ”の名前は
世界に大きく轟きました。
でも、
その時、参加していた
ディズニーの作品を見て
トルンカは
実際には
ディズニーのアニメには
表現力、構成など全てのクオリティーにおいて
敵わないと悟り、
今回のカンヌの受賞は
これまで
ナチスに支配されていたチェコでの
初めてのアニメ制作に対しての
”ご祝儀受賞”だったのだと
思ったそうです。
打ちひしがれた
トルンカを見て
ポヤルが
「では、”人形のコマ撮りアニメ”に挑戦しませんか？
我々は、”人形の扱い”に関しては
どの民族にも負けません。どうでしょうか？」
チェコは昔から”人形劇”が盛んです。
チェコには
”どんなものにも命がある”という考えがあり、
人形を操って
生きているみたいに表現する
人形劇は昔から
人気がありました。
１９世紀、
ハンガリー＝オーストリア帝国に
支配されているとき、
”チェコ語の使用を禁止”されていましたが、
人形劇の公演の時だけ、
チェコ語の使用を認められ、
民衆のガス抜きになっていました。
トルンカも
元々は人形劇団を率いており、
そして
人形作りの職人でしたので、
人形の扱いには
”誰にも負けない自負”がありました。
ポヤルのサジェスチョンに
”目から鱗”のトルンカは
アニメ制作を運営している国の偉い人に
「人形のコマ撮りアニメを挑戦させてくれ！」と
交渉に行ったのですが、
国は
「絵のアニメでシア優秀賞をとったのだから
（最初は絵のアニメを作っていたのです。）
そのまま、続ければいいじゃないか？
他のことをチャレンジする意味がわからない。」
と言って
却下したそうです。
そのあと、
トルンカがスタジオのオフィスに戻ってきた時
ポヤルが
国はどう答えたか、
尋ねると
トルンカは
「ダメだった。
許可されなかった…。」
と言ったので、
ポヤルは
慰めようと
「また、トライしましょう。
時間をかけて
説得しましょう。」と
言ったら、
トルンカから衝撃の
一言が…
「退職してきた…。」
ポヤル『えっ？」
トルンカ
「人形アニメをやると決めたのに
それが許されないのであれば
ここにいても無意味だろう。
だから退職してきた。」
このトルンカの
急で思い切った決断に
ポヤルは戸惑いました。
「トルンカについていくべきか。
でも、戦後の就職難に
就職できた国営のアニメスタジオ…
家族の面倒も見ることができるのに…
でも、トルンカあってのアニメの仕事…
やはり、トルンカとともにすべきか…？」
と迷っていましたら、
トルンカから
強烈な一言が飛んできました。
「君の”退職届”も出しておいた。
あと、ベドジフやチュトブルテクの分も…
どうせ、君らは私を行動をともにするに違いないから、
まとめて出しておいたよ。」
ポヤル「え？ ええっ！！？？」
でも、ポヤルは
トルンカのこの言葉で
腹を括れたそうです。
ここまでの話は↓こちらでも書かせていただきました。
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12760173426.html
前振りが長くなりましたが、
ここからが
本日の主人公
ヴァーツラフ・ベドジフの登場です。
その時、
トルンカのスタッフであった
ベドジフも
ポヤルらと一緒に
退職届を出されたのです。
ポヤルは腹を括って
トルンカについていこうと思ったみたいですが、
ベドジフは
どう思ったのでしょうか？
この件について
ポヤルに聞いたことがあります。
ポヤル
「ベドジフにとっては
”寝耳に水”だったろうね。
彼は”人形アニメ”には全く興味はなく、
”絵のアニメ”が好きで
その制作に十分、満足していたんだよ。
「いつか、絵のアニメでディズニーを超えてやる”と
息巻いていたからね。
それが、
私の提言でトルンカが人形アニメをやるので、
と言って、
退職し、それどころか
自分の”退職届”まで出されて
ふんだりけったりだったよね。
後で、べドジフから
「余計なこと（トルンカへの人形アニメの提言）をしやがって…」と
恨まれたよ。」
それから
ベドジフは”動いた”そうです。
不本意な退職とはいえ、
トルンカは
ベドジフにとっても
尊敬する師匠です。
敵対するわけにはいきません。
退職して
新しい一歩を進もうとしていた
トルンカのもとへ行って
こう言ったそうです。
ベドジフ
「トルンカさん、
私はトルンカさんに
ついて行きたい。
トルンカさんと
人形アニメを作りたい！（嘘です）
…でも、トルンカさんが
抜けた国営のアニメスタジオが
気がかりです。
このままトルンカさんが
抜けてしまうと
トルンカさんとスタジオの間に
大きな溝が残ります。
それはいけない。
国を敵に回してはいけない！
…苦渋の決断ですが、
私は国営のスタジオに残ります。
トルンカさんとは、袂は分かつことになりますが、
心が切られる思いで
トルンカさんの活躍を
祈っております。」
隣りで聞いていた
ポヤルは
ベドジフのあまりにも
”凄い嘘”に吹き出しそうになったそうですが、
それに気づいたベドジフに
睨まれたので、
下を向いて堪えたそうです。
トルンカは
純粋な人物だったようで、
ベドジフの言葉に
「おお、ベドジフくん、
そう言われれば、その通りだ。
君が犠牲になってくるのか？
本当に申し訳ない。
私も君と別れるのは辛い。
でも、いつか会える日がくるよ。」
と言って
涙を流し、
ベドジフは
「おお、トルンカさん…」と言って
涙を流し、
二人が抱き合う姿を見て
この”大真面目な茶番”に
ポヤルは
後ろを向いて
吹き出すのを堪えたそうです。
その震えるポヤルの背中を見て
トルンカは
「みんなも君との別れを
堪えているよ。」
と言ったそうです。
そして、
ベドジフは
次に
国営のアニメスタジオに行きました。
すでに退職届が出され、
受理されています。
でも、撤回させなければなりません。
ベドジフは
国の偉い人を訪ね、
こう言ったそうです。
ベドジフ
「トルンカさんと
共に行動するつもりでしたが、
残されたスタジオのことを考えると
”無責任な行動”はできない、と思い、
戻ってまいりました。
我々が全員抜けたら、
国営スタジオも大変でしょう。
今更で申し訳ないのですが、
トルンカと学んだ
アニメのキャリアを
国営スタジオの役に立てさせていただけないでしょうか？」
ベドジフの”巧み”なのは
”トルンカの勝手な行動”と言わず、
そして
”自分にとっては不本意な退職届だった”とも言わず、
あくまでも
”下手（したで）”から
”頼んだ”ことです。
実際、
国営スタジオは
”作り手”がいなくなって
困っていたので、
ベドジフのように低姿勢で
戻ってこられると、
気分良く受け入れやすかったみたいです。
それで
ベドジフは
国営スタジオに
復帰したのです。
しかも、
誰とも”軋轢（あつれき）なし”で。
ベドジフさんの存命中、
この件について
伺ったことがあります。
ベドジフ
「そりゃもう、
各方面に気を使ったよ。
…まあ、でも、人生そんなものさ。
自分は”何者でもない”んだ。
誰かの世話になって生かされるんだ。
謙虚に頭を下げながら
生きてれば
人生は開けていくよ。」
ベドジフは
このような
”水面下”で動く能力が発揮され
国営スタジオに復帰後、
国営スタジオのトップになり、
チェコアニメ全盛期の
１９７０年代〜１９８０年代にかけて
”縁の下の大フィクサー”として活躍し
２００以上ののアニメ作品に
携わり、９１年の人生を終えたのです。
また、どこかで
「トルンカとポヤル」に関わった人物について
書かせていただこうと思います。
チェコアニメのエピソードを
お聞きになりたい方は
私、川崎市多摩区の
「チェコのアニメと絵本の店」に常駐しておりますので、
お越しください。
いくらでもお話しいたします。
≪「チェコのアニメと絵本の店」10月の残りの営業日≫
１０/２９（土）１４時〜１９時（※１９時〜「海外著作権・ビジネス交渉講座」）
１０/３０（日）１４時〜１９時（※１９時〜「エピソード・トークショー」）
↓詳しくは↓
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12770996793.html
▼劇場HP
https://www.theater-seven.com/ev/ev_czech01.html
≪チェコのアニメと絵本の店≫
10月の残りの営業
１０/２９（土）１４時〜１９時（※１９時〜「海外著作権・ビジネス交渉講座」）
１０/３０（日）１４時〜１９時（※１９時〜「エピソード・トークショー」）
１０月は
「海外著作権・ビジネス交渉講座」と
「エピソード・トークショー」を開催します。
↓詳しくは↓
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12766169055.html
≪銀座直売会≫
＜日程＞
■１０月２７日(木) １７時〜２０時
■１０月２８日(金)１７時〜２０時
https://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12766477075.html
≪チェコチェコショップ≫
チェコのアニメのＤＶＤ，絵本
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他では見つけられないレアグッズまで
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グッズを作ってくださる企業様や、
グッズの物販イベントやチェコアニメの上映を
受け付けています。
ご希望の方は
アットアームズ（担当：眞部）
までご連絡お願いいたします！
☆アマールカの画像を使用してください！
アマールカの画像を是非、
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