「失敗は成功の母」という言葉がある。果たしてそれは本当か。
答えはYesでもありNoでもある。
なぜ失敗したのかを正しく調査、解析し、その対策をとれば成功に近づくし、
逆に運が悪かったと何も考えずに繰り返せば成功は遠のく。
また、そういった技術面でのアプローチ自体は正しくても、周囲へのアピールが
不十分で失敗に分類されるケースもあるかもしれない。
先人たちもこういったことで技術の蓄積を行ってきたのだろう。
それを愚者たるおいらにも解りやすく体系的に「失敗学」としてまとめているのが
畑村洋太郎 氏だ。
代表著である「失敗学のすすめ」でその考え方を解りやすく提示している。
そして、「失敗学実践講義 だから失敗は繰り返される」で実際に起こった事故の例を挙げて
細かい説明がされている。
たとえば
同じ2005年に起こったJRの脱線事故でも、JR西日本の福知山線脱線事故と
JR東日本の羽越線脱線事故は本質的に全く異なる。前者はブレーキ遅れの速度超過、
それを警告できないシステム、無理のある線形、過密ダイヤ、組織体質etc・・・
いろいろな不安全要素が複合的に絡まり起こった事故であり、それを大別すると
組織上のミス、個人のミスにより発生したものであり、防げるはずの事故である。
(その後の対応でさらに遺族感情を悪化させたがそれはまた別の話。)
しかし、後者は当時は誰も経験がなかった気象状況の上、念のため速度を抑えて運行し
次の駅での運行見合わせが決まっていたにもかかわらず突風で脱線転覆してしまった、
いわば誰の責任でもない事故である。その後、当事者であるJR東日本はじめ他の
JR各社も風速計を増設、より安全な方向になっている。
(まぁ、おかげで関東では冬場の強風の遅れがデフォになってしまったが・・・)
もう一つ。
2004年の新潟県中越地震の際に上越新幹線が脱線した。一部マスコミは
「安全神話の崩壊」などと騒ぎ立てたが、果たしてそうか?
M6.8級の直下型地震を受けたにもかかわらず、時速200km/h以上の
速度で走っていた列車が、脱線こそすれ転覆せずに一人のけが人もなく安全に
停止したわけだ。これを偉大なる失敗と言わずして何と言う?
個人的な趣味もありここでは鉄道関係のネタで説明したが、他にも回転ドア事故、
JALの運行トラブル、みずほ銀行の金融システム失敗等、
さまざまな内容の失敗について分析されており、非常に読み応えがある。
技術系だけでなく文系の人にも是非読んでほしい。
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- 失敗学実践講義 文庫増補版 (講談社文庫)/畑村 洋太郎
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- なお、関連したものとして、別著者だがこういうのも。
- アフタヌーン新書 006 ジオン軍の失敗/岡嶋 裕史
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こちらは政治的なものは全く抜いて、あくまでメカの開発に絞って書いてあるもの。
やや強引なきらいもあるし、そもそも1stガンダム自体が1年戦争の最後の4カ月と
いう設定だけに、ちょっと開発スピード、生産スピードが速すぎるというツッコミもあるが、
まぁそこはフィクションとして。