今回は、CS テレ朝チャンネル、清野茂樹アナセレクションのワールドプロレスリングZ「国際プロレス特集」のシリーズ第9弾なんですが、なんでこれが書き掛けで止まっていたかというと、この試合って大して語ることが無いんですよね。
1986年5月1日(木)
東京都:両国国技館
新日本プロレス「ビッグファイターシリーズ」最終戦=第17戦
第1試合
▼15分1本勝負
○佐野直喜(10分44秒 前方回転エビ固め)×蝶野正洋
第2試合
▼20分1本勝負
○ランディ・コーレイ(8分30秒 体固め)×ブラックキャット
第3試合
▼30分1本勝負
○ケリー・ブラウン ゲシュタポ(6分2秒 体固め)ドン荒川 ×小杉俊二
第4試合
▼30分1本勝負
エル・カネック(12分21秒 両者リングアウト)星野勘太郎
第4試合
▼45分1本勝負
○ディック・マードック マスクド・スーパースター(6分5秒 体固め)後藤達俊 ×橋本真也
セミファイナル
▼「新日本対UWF、5対5シングル勝ち抜き戦」=各20分1本勝負
<UWF>先鋒 高田伸彦、次鋒 山崎一夫、中堅 木戸修、副将 藤原喜明、大将 前田日明
<新日本>先鋒 山田恵一、次鋒 坂口征二、中堅 越中詩郎 副将 木村健吾、大将 藤波辰巳
高田伸彦「最初に一番小さいの(山田)とやって、その後すぐに一番大きい坂口さんだったでしょ。作戦の組み立て方が難しかったですね。実はね、山田と闘っている最中、もうすでに頭の中は坂口さんとの試合のことでいっぱいだったんですよ。だから、あれだけ山田に攻め込まれちゃったんじゃないかな。坂口さんは蹴っても蹴っても倒れないから苦労した。ミサイルキックは、もうかわされてもいいやって気持ちで出したんです」
(8)○藤波辰巳(8分56秒 逆さ押さえ込み)×藤原喜明
(9)○前田日明(6分30秒 レフェリーストップ)×藤波辰巳
※5勝4敗でUWFの勝利
バックステージ
「試合が始まってすぐ、ハイキックを5,6発入れてみたら面白いように決まるんで、今日はいけると思った。でも、敵を褒めるわけじゃないが、今日の藤波さんは最初からハンデを背負ってたからね。正直言って、あの頑張りにはシャッポを脱いだ。本当はベストコンディションで納得いくまでやりたかった。俺と藤波さんが全力で真正面からぶつかり合えばね、これまでのプロレスにはなかった新しい流れが見えてくるはずだと思います。UWFのプロレスには格なんてない。勝ち負けをはっきりし、負けたらまた練習して出直してくればいい。スポーツってそういうもんでしょ? 俺は藤波さんの実力を認めます」
※この時代、前田を1番光らせたレスラーは藤波辰巳(毎回血まみれになって)だと思うのだが、後に藤波は「あの時代誰も前田とやりたがらなくて、しょうがないから嫌々自分が相手をしていた」と、当時を振り返っている。
'86年というと、私は九州の片田舎で高校生1年生だったですが、リアルタイムで見た新日本プロレスの中では、この頃が1番好きだったかな?
私は所謂U信者では無いのですが、新日vs.UWFの抗争には随分と入れ込んで見ていた記憶が有ります。
「新日本対UWF、5対5シングル勝ち抜き戦」の最後は、副将・藤原の場外乱闘やヘッドバットでボロクソにやられた藤波がUWFの大将・前田戦に駒を進めるのですが、もう試合前から血みどろです。
そこに遠慮なく蹴りをぶっ込み、チョーパン(頭突き)決めて掟破りのドラゴンスープレックスまで繰り出すという本当にやりたい放題で、最終的にはレフリーストップという判定が下されるんですが、スポーツってそういうもんでしょ? っていう、前田の爽やかさん風のコメントとは全く真逆な試合内容だったことは言うまでもありません。
先日、日本テレビの深夜番組(地上波)で、生放送の番組MCに前田日明を起用して炎上🔥するという放送事故が発生していますが、'80年代のテレビ朝日では毎週末、夕方やゴールデンタイムの地上波に前田日明を乗せて垂れ流すという暴挙がまかり通っていました。
まだコンポライアンスなどという言葉も無く、そんな社会秩序の低かった時代が日本にも存在していたという話なのですが、それはさて置き、この 壮絶な「新日本対UWF、5対5シングル勝ち抜き戦」の後に、メインイベントとしてこの試合が組まれています。
※コンポライアンスという単語は、2006年にPRIDEが反社会勢力との繋がりが指摘され、コンポライアンス違反を理由にフジテレビとの契約が解除されたことから団体の崩壊に繋がるというストーリーで、初めて一般の日本人に浸透した言葉であり、このときプロレス団体は反社会勢力と繋がっていてはいけなかったんだ! と、ショックを受けたファン並びに関係者も少なくなかった。
メインイベント
なんでしょうね…
前田vs.藤波戦がメインで良いんじゃないか? いや、その前になんで猪木が対抗戦に出てないんだ? って疑問だらけの展開なんですが、マシン軍団を引き連れて登場する悪徳マネージャー(悪の正太郎くん)というイメージの将軍KYワカマツがアンドレとタッグを組むんですが、反対コーナーのアントニオ猪木の相方もUWF対策で急遽正規軍に組み入れられた上田馬之助という、珍しい組み合わせです。
この将軍KYワカマツは何が出来る訳でもなく、ボディースラムの他は殴る蹴る噛み付くくらいで、あとは猪木と上田に捕まって血ダルマにされます。
試合内容はアレですが、最後は猪木がビシッと決めてくれます👍🏻✨
ブレーンバスターからホールの流れで救出に駆けつけたアンドレを延髄斬りで場外に叩き落とすのですが、この際アンドレはトップローブとセカンドロープの間に腕が挟まって動けなくなるという、お約束のムーブを繰り出します。
※あのロープの中って鉄のワイヤーですから、あんなのに挟まったら無茶苦茶痛いと思いますが、これもレスラーのすごさですね。
ロープに絡まったアンドレを尻目にワカマツに延髄斬りを放つと、更に引き起こして追い延髄!
3カウントを決めた後のこの表情!
いつの間にかに額を流血させて良い表情なんですが、やっぱりインパクトは弱いですよね?
新日本プロレスとUWF全面対抗戦をやった後にこんなベタなプロレス見せられてもな…
オマケに相手は国際プロレスのリング屋のオヤジだし! って感じですよね。
私が学生時分に熱狂した新日本プロレスvs.UWFのイデオロギー闘争ですが、ゴールデンタイムで20%以上の高視聴率を出し続けていた国際プロレス軍団との抗争に比べると、テレビの視聴率的には全然ぱっとしなかったらしいですね。
如何にも悪人面をして反則を繰り返す、外敵3人組を真正面から猪木が迎え撃つという分かりやすい構図と比べ、UWFって言っても元々新日に居たレスラーだし、新しいプロレスの形として若い層にはウケたけど、実際はプロレス自体が下手くそだったって部分も有り、イデオロギー闘争っていうのは一般視聴者ウケしなかったんでしょうね。
そんな状況で苦肉の策として、メインに大巨人と悪の正太郎くんという、一般視聴者に受け入れられ易いアイコンを投入せざるを得なかったのでは無いかと思います。
こうやって振り返ってみると新日本プロレス50年の歴史の中で、国際プロレス軍団の貢献度ってのは結構高い気がしますね。
次回、「国際プロレス特集」最終回になりますが、満を辞してあの男の登場となります。