- にぎやかな眠り (創元推理文庫)/高田 恵子
- ¥1,008
- Amazon.co.jp
ふたりは声をあわせて笑い、シェリーを飲んだ。おたがいのあいだに、心地よい親しみが生まれた。
・・・・・
ミス・マーシュが言った。
「いけません、ひとつは私が持ちますわ」
「とんでもない」
どうにかよろけることもなく、シャンディはスーツケースを2個とも持った。
自分がいいところを見せようとしているということ、そして、自分のような年齢の男がそんなことをするのはばかげているということは、自分にもよくわかっていた。
そのうち、ミス・マーシュをよろこばせるために、ヒョウの毛皮を着て木から木へと飛び移って見せるのではないだろうか。シャンディはふとそんなことを考え、やってみるだけの値打ちはあるかもしれないと思った。
・・・・・・・・
「ごめんなさい。さっきのシェリー酒のせいかしら。それもと、おなかがすいているせいかしら。食堂までは遠いんですの?」
「クレッセント通りをのぼりきったあたりの右側の最初の建物ですよ。あそこまで持ちそうですか?」
「なんとか。産卵期のメスのサケのような気持ちですわ。」
・ ・・・・・・・
「ジョン、お客さまよ。さあ、その荷物を預かりましょう。まあ、すてきなコートだこと、ミス・マーシュ!カリフォルニアではみんなそんなコートを着てるんですか?新聞なんかでみると、むこうのひとたちはあんまり服なんか着ないのかと思っていましたけど。とり散らかしてますけど、書斎へどうぞ」
☆ 私の大好きなユーモアミステリーです。
シャーロット・マクラウドさんの作品はどれも大好き。ほのぼのとしたユーモアと日常の明るい生活感に、とても心和みます。
もともとは、父親の書棚から失敬して読み始めたのが最初。ストレスの多い仕事の合間の移動時間に、かじりつくように読みふけっていました(笑) 父上、良い本を並べておいてくれてありがとう~♪ おかげで酒にもパチンコにもはまらずに多忙な時期を乗り切れましたよ。
☆ 殺人事件の謎もなかなか凝っているし、なにより、登場人物たちとその会話が魅力的。全編、さりげない上品なユーモアに満ちていて、楽しいことこのうえありません。
シャンディ教授、頭のてっぺんが薄くなりかけている中肉中背のグレーの上等なスーツを着た大学教授、素敵な女性の前ではターザンの真似をしてみますか(笑)
やってみる価値があるかも、と思うところが素敵です♪
わー、ヘレンさん、産卵期のメスのサケのようにお腹がすいているって・・・(笑)
いえいえ、カリフォルニアの人だって、服は着てますってば(笑)
☆ この作品は、アメリカの農業大学を舞台にした名探偵シャンディ教授シリーズの第1作め。シャンディ教授は56歳、ミス・マーシュは40歳すぎの図書館司書。のちに結婚する二人が力をあわせて解決する、最初の物語です。
☆ 登場人物が多いのと、日常のこまごましたことが丁寧につづられるので、最初は面白くないかも。。あれ、この人だれだっけ? とか、えーっと、話の本筋はどうなってたっけ、もう、かったるいなぁ、みたいな感じで(笑) そこを我慢して、何度も読み返してなじむほどに、味わいが増します。 登場人物が腕まくりをして大掃除を頑張っていたりするのも私には良い刺激です。架空の農業大学の教職員たちの、古き良き健全な生活感覚、日常のこまごまとした些事に雄々しく立ち向かっていく威厳あふれる姿が素敵です。
☆ 1987年が初版なので、もう30年近くまえの本ですね。でも、全然古くありません。たまに古本屋で105円で売っているのを見かけます。現実逃避に最適ですよ。ぜひご一読あれ。
・・・・