前項で、南米大陸の中でなぜブラジルだけがポルトガル語なのかの事情がわかった。
では、ポルトガル語の現在はどうなのだろう。

世界でポルトガル語を公用語としているのは8か国。
ただ、ブラジルだけが発音はもとより、表記も語彙も多少異なる。
(何年か前、駐日モザンビーク大使の通訳を引き受けた際は、 「聞きとれなかったらどうしよう」と非常に心配だったが、なるほど!。確かにポルトガル人の発音と同じようだったがブラジルの発音とは大いに異なっていた。語彙の相違と共に少し慣れれば100%理解できるが)。
CPLP(ポルトガル語諸国共同体)は数年ごとに「正書法」を見直しているが、近年はブラジルの学者の意見が6割位入っていると報道されている。話者数、経済力とも一番だからか?

私がブラジル在住当初に気づいたのは、ブラジル人はポルトガルのことを何となく馬鹿にしているような感じであること。「ポルトガル人のポルトガル語はむしゃむしゃ話すのでよく分からない」、「寒くてあまり口を大きく開きたくないのだろう」などの言葉や、(間抜けな)ポルトガル人を主人公にした笑い話がよく聞かれる。「正書法」といい、このような戯れ言といい、旧宗主国のことをよくも!と私は驚き続けている。
(知人の知人であるポルトガル人二世は「いいの。もう慣れてしまったわ」と言っていた)

日本のある大手新聞が運営するオンライン掲示板に、日本在住のポルトガル女性と思われる人が「息子に教えるためにポルトガル語教材を探しているが、日本ではブラジルポルトガル語のものばかり」と憤慨していた。
私は丁度日本に本帰国した時期で、この投稿にとても驚いたことを思い出す。
そういえば、市販の普通のポルトガル語教材はほぼ全て「ブラジルポルトガル語」と謳っている。大学でのポルトガル語授業はどうなっているのだろう。

余談だが、私がまだポルトガル語講師新米のころに使った教本の例文に文法の誤りがあったので(両国のポルトガル語の相違というものでなく、文法上の誤り。英語をそのまま訳したことによるものである感じがした)、驚いて先輩のブラジル人に言ったところ苦笑いして次の返事が!
「そうなんだよ。僕もその本を使っていた頃、 生徒に「ここは間違っているから」と注意したら、「何を言っているのだ!著者は大学の先生だぞ!」と怒られたよ」。

社会人になってからポルトガル語を学ぶ人はポルトガル語圏への駐在のためなどが多いと思われるが、個人教授は高い、多人数クラスは時間の無駄、仕事の関係で予定キャンセルが多いなど、支障が多い。
このような場合は独学した方がよいが、そのための理想の教本を発見した。
詳しく、正しく、至れり尽くせりなので、下記を是非お勧めしたい。(初級、中級が買えるが上級はまだ出版されていないようだ。)

「ブラジル人による生きたポルトガル語
基礎をとことん学びたい人のために
Portugeus Vivo」
兼安シルビア典子著 同学社


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従い、このブログで「ポルトガル語」と記すのは「ブラジルポルトガル語」のことです。念のため!