ざっとしちゅう -3ページ目

恋に恋して ①

大学も3年になると、専門科目ばかりになり、また就職セミナーや実習などで忙しくなりました。


相変わらずケイ君やシンちゃんとも連絡を取っていましたが、以前ほどつるまなくなっていました。


だけど時々は郊外から街に出て遊んだり、テレクラで知り合った人と待ち合わせをしたりもしたかったので、軍資金の為にアルバイトを始めました。

時給750円で、ジーンズショップの店員です。
ジーンズショップと言っても、田舎の街中にあって、地元の中・高校生が自転車で立ち寄るようなお店で、ガラのあまり良くないオーナー夫妻と大学生のアルバイト2人位で運営していました。


夏前位から始めて、晩秋位までの約半年ほど勤めましたが、オーナー夫妻とは最後まで打ち解けることなく、就職活動を始めなければならないとごまかし、辞めてしまいました。



後期試験も終わり、アパートで一人暇をもてあましていた僕は、いつものようにテレクラに電話をしました。

テレクラはつながっても会話が弾むことは稀で、会話はできても、いざ待ち合わせをして会うところまではなかなか話が進まないことがほとんどでした。

その日は、運良く同世代の男の子とつながり、会話をしているうちに、同じ大学で、住んでいるアパートもすぐ近くということが分かりました。

今までに無い偶然に胸を高鳴らせた僕は、その日の深夜に、その人のアパートに上がり込む約束を取り付けました。

仲間意識

ゲイバーに行く時は、ケイ君、シンちゃん、僕の三人で連れだって行くことがほとんどでした。


人目をひくスリムなスタイルのシンちゃんと、普通っぽい素朴な可愛らしさのあるケイ君と行動を伴にすると、たいていのお店では歓迎され、他の30代~40代のお客からは誘いの声がかかり、二人にただくっついているだけの僕も、『結構、僕モテるかも?!』と気持ちのいい勘違いをすることができました。


何といっても、一番人気はケイ君で、ゲイの世界に染まっていない初々しさで、店員さんからもお客さんからも人気がありました。
シンちゃんもお客さんからは声がかかるのですが、人気に嫉妬した店員から『売りやってるから、ビョーキが恐い』と噂を流されたりもしたようです。


僕も、二人の引き立て役でなく注目を集めたいと、積極的に会話に加わるようにしていましたが、かえって欝陶しがられているような空気になることも多いうえに、飲み代の負担も大きく、『ゲイバーは向いてないなぁ』と思うようになりました。

だけど、ケイ君やシンちゃんの誘いを断ると、『次から誘ってもらえなくなるかも…』と心配になり、つい調子良く誘いに乗っている自分がいました。


ゲイバーでは、他の同世代のグループと仲良くなることもあり、ケイ君やシンちゃんはネットワークを広げていきましたが、あまり顔が広まると、どこからアシがつくかもわからないと、僕は一人消極的になってしまっていました。


ジン君という男の子やカズ君という男の子とも仲良くなった僕達は、常時4~5人で行動するようになりましたが、僕は誘いを断ることも多くなりました。

それでも、ケイ君はデビューが同じだった僕のことを気にかけてくれ、よく連絡をくれました。

僕はあわよくば、ケイ君の包茎チンコをもう一度イジりたいと、画策していましたが、ケイ君は僕を友達としか思ってなく、しばらくしてケイ君は、某ゲイバーのマスターと付き合い始めました。

シンちゃん

ケイ君とのSEXは一回こっきりで、僕とケイ君は‘ゲイ初心者の友達’としてちょくちょく連絡を取り合うようになりました。

当時、誰もがポケベルを持っていて、僕もケイ君に触発されて持ちだしました。

たいていは、ケイ君が知り合ったおじさんやお兄さんとのデートに、僕が飛び入りで参加し、遊びや食事をおごってもらう算段でした。

僕は気弱なせいか、初めて会った人、それも自分がデートの邪魔者の立場で会った人に、おごってもらうことに抵抗がありましたが、ケイ君に、
「年上がおごるのは当たり前。それに二人きりになると、絶対イヤラシイ事されて嫌だから、ついて来て!」
と頼まれ、鈍感で図々しい男の子の役を担わされました。



シンちゃんと出会ったのは、おじさんの一人に連れて行ってもらったゲイバーでした。

おじさんはその気だったのに、まったく相手にしないケイ君と、図々しくデートに割り込み、飲み食いする僕に腹をたて、ゲイバーに僕とケイ君を残し、一人帰ってしまいました。


おじさんが帰った後、一人ぽつんと座っていた、スリムで可愛い男の子に、ケイ君が話掛けました。
それが、シンちゃんです。

シンちゃんは僕よりひとつ年下の当時19歳。アンニュイというか、けだるそうにカウンターに座っていて、このゲイバーにも来慣れているようでした。

話し始めると、やはり同世代なのかすぐに打ち解け、連絡先を交換し、改めて三人で遊ぶ約束をしました。


僕やケイ君が大学生という肩書きなのに対して、シンちゃんはフリーターというか、ほとんどバイトらしいバイトはしていない様子でした。


専門学校は辞めちゃったけど、仕送りしてもらえるからそのままマンションで暮らしてて、何か欲しいものがある時はバイトするかな‥‥。

まるで他人事のように自分のことを語ったり、そう高くはない物だけど、衝動買いのように洋服やインテリア雑貨を買ったり、そのくせゲイバーではたった一杯のビールで2~3時間粘ったり‥‥。

どこか、つかみどころのないシンちゃんに戸惑いながらも、三人で連れだって遊ぶことは、僕の退屈で平凡な生活では、唯一の潤いでした。



シンちゃんのバイトが‘売り専’と人づてに聞いたのと、僕とシンちゃんがSEXしたのと、どっちが先だったか記憶はあいまいです。
いつものように三人で遊んだ後、家の遠い僕はシンちゃんのマンションに泊めてもらいました。

一緒にもぐった布団の中で、どっちが先にモーションを仕掛けたのかも、よく思い出せませんが、シンちゃんのチンコは、細い身体や可愛らしい顔立ちとは不釣り合いな、ふてぶてしい巨根でした。

でも、きれいなサーモンピンクの亀頭や、扱きあげた時の皮の余り具合から察して、
「シンちゃんは普段は包茎なんだね?」
と、問うと、
「それは、秘密!」
と、はぐらかされた事は、よく覚えています。



シンちゃんは、自分から売り専の話をすることはめったにありませんでしたが、『辞めたい』とは思っていたようで、ウェイターやカラオケボックスなどのバイトを探しだしてはきましたが、どれも長続きはせず、日払いでそこそこ稼げる売り専からは、結局抜け出すことはできなかったようでした。