第1 設問1
1 設問前段について
(1) 憲法上の権利の制約
ア 本件処分は、Aの、市民会館で講演会を開催する自由を制約する。
イ 講演会を開催することは、複数の者が同一の場所に集まって情報を伝達し合う活動であり、集会の自由(21条1項)で保障される。
そして、市民会館は集会の用に供する公の施設である。地自法244条2項により、市民会館を使用して集会することが原則として認められる。よって、市民会館は、一般公衆が集会を行う場として開かれた場所であり、パブリックフォーラムである。そこで、市民会館を使用して集会する自由が21条1項により保障される。
ウ よって、本件処分は、同項で保障される、Aの上記自由を制約する。
(2) 判断枠組み
Aの上記自由は、Aが自らの活動内容を発表して社会的決定に関与するという重要な意義を有する。そこで、「正当な理由」(地自法244条2項)とは、市民会館における集会の自由を保障することの重要性よりも市民会館で集会が開かれることによって人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいう。その危険性の程度は、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である。
(3) 本件では、Y市長は、本件処分の理由として、市民生活の平穏が害されるおそれを挙げる。しかし、これは抽象的な危険にすぎず、人の生命、身体又は財産が侵害される危険ではないから、「正当な理由」に当たらない。よって、本件処分は21条1項に違反する。
2 設問後段について
(1) 本件処分は、設問前段と同様に、21条1項で保障される、Bの、市民会館で集会する自由を制約する。
(2) Y市長は、Bの市民会館の使用目的に着目して本件処分をしている。公共団体が公の施設の使用の許否を決するに当たり、集会の目的を理由として使用を許可しないことは許されない。よって、本件処分は21条1項に違反する。
第2 設問2
1 Y市側の反論
(1) 設問前段について
反対団体の実力行使によって、Aの構成員、市民会館の職員、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害される明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される。よって、「正当な理由」が認められる。
(2) 設問後段について
Y市長は、Bの集会の目的に着目したからではなく、同集会の引き起こす害悪に着目したから本件処分をしたのである。すなわち、集会に参加したBの構成員により実際に実力行使がされた場合、住民と警察官との衝突が予想され、混乱が生じ、負傷者が出ることが予想される。よって、人の生命、身体又は財産が侵害される危険性が認められる。そして、Bの集会は、施設の建設を実力で阻止するための決起集会であるから、集会終了後実力行使に出ることは確実である。よって、人の身体が侵害される明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される。したがって、「正当な理由」が認められる。
2 私見
(1) 設問前段について
たしかに、Y市側が反論するような危険の発生が具体的に予見される。しかし、同危険は、Aではなく反対団体から生じるものであるから、反対団体の行為を規制することにより同危険を防止すべきである。そこで、同危険を理由に本件処分を行うことは、警察の警備等によってもなお混乱を防止できない特別な事情がない限り、21条1項に違反する。
(2) 設問後段について
たしかに、Y市側が反論するように、害悪に着目して本件処分をしたといえる。そこで、上述した基準により判断すべきである。
本件では、Y市は、施設の建設を予定している段階であり、未だ工事に着手していないと認められる。そうすると、Bが同決起集会を開催したとしても、集会終了後その足で実力行使に出るわけではない。工事に着手した段階でBの実力行使に警察力で対応すれば人の生命身体財産侵害を防げる。よって、「正当な理由」は認められない。したがって、本件処分は21条1項に違反する。
(1620字)
※第2.1(1):Y市長は「市民生活の平穏」という主観的な判断をしているが、危険性の程度は客観的に判断するというのが泉佐野市民会館事件判例の立場なので、「人の生命、身体又は財産が侵害される危険性が認められる」とY市側が反論することも可能(「ガール」P.8)。