第1 1について
1 AはBに対して250万円の不当利得返還請求(703条)ができるか。
(1) Aは代金全額を支払っており、Bに「利得」、Aに「損失」、両者に「因果関係」がある。
(2) 「法律上の原因なく」
ア AB間の本件土地売買契約は、3.3平方メートル当たり25万円として代金額を2500万円と決められており、一定の数量を基礎として代金額が定められており、数量指示売買(565条)に当たる。
イ 本件土地の面積は33平方メートル「不足がある」(同条)。
ウ 専門業者の実測の結果、同不足が判明しており、契約時にはAは同不足を「知らなかった」(同条)。
エ よって、AはBに対して250万円の代金減額請求ができる(565条、563条1項)。したがって、Bの「利得」のうち250万円に「法律上の原因」がない。
(3) 以上より、Aは上記請求ができる。
2 AはBに対して2500万円の原状回復請求(545条1項本文)ができるか。
(1) 上述のように、AB間の本件土地売買契約は数量指示売買であり、Aは「善意の買主」(565条、563条2項)である。
(2) Aは本件建物を改築するために必要な330平方メートルの土地として同契約を締結している以上、297平方メートルの土地ならば「買い受けなかった」(同項)。
(3) よって、AはBに対して同契約の解除ができる(同項)。したがって、Aは上記請求ができる。
3 AはBに対して1000万円の損害賠償請求(565条、563条3項)ができるか。
(1) 上述のように、AB間の本件土地売買契約は数量指示売買であり、Aは「善意の買主」(565条、563条3項)である。
(2) 同1000万円は、面積330平方メートルの本件土地がBから引き渡されたのであればAC間の本件土地売買契約によりAが得られたものであり、履行利益である。履行利益は「損害」(同項)に当たらない。なぜなら、565条は、特定物の売買契約締結時に目的物の数量が不足している場合には、売主はその物を引き渡せば足りる(483条)が、これでは有償契約の対価的均衡を害するので法定責任として規定された。そうすると、不足のない物を履行する債務が観念できないからである。
(3) よって、Aは上記請求ができない。
第2 2について
1 DはAに対して本件土地所有権に基づき本件建物収去本件土地明渡し請求ができるか。
(1) DはBから本件土地を二重に譲り受け、Aより先に登記を具備している。よって、本件土地所有権はDに帰属する(177条)。
(2) AB間の本件土地売買契約により、本件土地賃借権は、混同により消滅するのが原則である(197条1項本文類推適用)。よって、Aは無権限占有であるのが原則である。
しかし、Aはもともと対抗要件を有する同賃借権を有していた(借地借家法10条1項)。それにもかかわらず、同原則を貫くと、Aは本件土地所有権のみならず、同賃借権まで失い、建物収去を余儀なくされる。Aが数年間本件土地の登記の移転を怠ったのがひとつの原因となったとはいえ、Aの居住の利益は保護に値する。
そこで、以下のように考えるべきである。混同の趣旨は、権利の存続が無意味である点にある。そうすると、上述のように、Aの同賃借権を存続させることに意味がある本件では、179条1項但書を類推適用して、Aの同賃借権は混同の例外として消滅しない。そして、Aは同賃借権につき対抗力を有する(借地借家法10条1項)。よって、Aは占有権限を有する。したがって、Dは上記請求ができない。
2 DはAに対して、賃料請求(601条)ができるか。
(1) Dは、Bとの間の本件土地売買契約に伴い、賃貸人たる地位を承継する。なぜなら、①Dは、Aの本件土地賃借権が解除により消滅したと考えており、同地位を承継する意思がないとも思える。しかし、Dが同地位を承継しないとすると、Aが転借人の地位となるという不測の不利益を受ける。また、②同地位の移転には使用収益させる債務(601条)の免責的債務引受の要素を含むが、同債務は非個性的であり、Aの承諾は不要であるからである。
(2) Dは同地位をAに主張するための権利保護要件たる登記を具備している。
(3) よって、Dは上記請求ができる。(1731字)
※第1.1:時間がなければ省略可(「受験新報」2016.6月号P.5)。
※第2.2(1)①:新旧所有者間において賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨を合意したとしても、賃貸人の地位の新所有者への移転を妨げないとする、最判H11.3.25の理由付けが本件でも妥当する(「読み解く」P.117)。