・今まで何回か「浄土思想」にからんだ展覧会や、本について書いていた。親鸞展を見た | 雑文・ザンスのブログ (ameblo.jp)読書感想:①「浄土真宗とは何か」親鸞の教えとその系譜 | 雑文・ザンスのブログ (ameblo.jp)読書感想:②「浄土真宗とは何か」(小山聡子著・中公新書) | 雑文・ザンスのブログ (ameblo.jp)読書感想:「浄土真宗とは何か」③(小山聡子著・中公新書) | 雑文・ザンスのブログ (ameblo.jp)これらを踏まえて「浄土思想」を読んでみた・。

 

・著者は、浄土教(浄土派の浄土宗、浄土真宗、時宗などの宗派が属し日本で最も信者数が多い)が、「なぜこれだけ多くの信仰を集めたのか?」と問いかける。

 

結論を先に言ってしまうと、教えの広がりは、「物語の力」にあるのではないか?との着目だ。衆生を救うために誓をたてて阿弥陀仏になった「法蔵説話」、家庭不和を主題とする「王舎城の悲劇」、継子いじめが主題の「中将姫」の物語・・。これに法然や親鸞ら開祖たちの物語が繰り出される。

 

・「親鸞展」を京都で見た時、「絵伝」の前でお経(般若心経?)を唱えだしたおばあさんがいて、びっくりしたが、いつもお寺で絵伝を前にやっている事なのかな??多分、お寺さんから「京都の展覧会ももうすぐ終わりますよ。ぜひ見に行ってくださいね・・。」と推奨されたのかも・・。こういうビジュアルに訴える何かがあると、「ありがたさ」が増す。「中将姫」は継子いじめという卑近な例だが、姫が西方浄土に迎え入れられる儀式を目の前で見られるので大いに受けたらしい。特別展の図録「法然と極楽浄土」pp.144-145に當麻寺で行われる「来迎会」の様子が説明されている。

 

・大乗経典は釈尊の直説(じきせつ)ではないと批判されるが、これに対しては、「仏になるのに相応しい環境である浄土を阿弥陀仏が用意し、そこに迎え取ろうとして下さると説く。阿弥陀仏の本願の力により、衆生が浄土に往生し、そこで仏になる事を信じるのが浄土教である。そして,浄土教の経典に書かれているのが、成仏を可能にする阿弥陀仏とその浄土の物語である。」(pp.4-5)と反論する。

 

・著者は3つの局面に注目する。すなわち①経典の制作と文字化によりもたらされた局面。

②経典の読み方、解釈に関する局面。経典の解釈も宗師、祖師のものが絶対視され、継承される。③高僧伝、祖師伝など「新たな物語」が作成され、広く流布されていった。その3つに通底するもの。それは「成仏の教え」である。