・「国宝」(とんぼの本)の「「国宝」という物語」(pp.193-208)を読んでいたら、「国宝」指定の変遷が解説してあった。(松山巌氏(建築家・小説家)解説。)内容は少し古い。(1993初版。2005年改訂版。)というか、問題点がそれ以降、多少なりとも改善されているという事か・・。

 

・なかで強調されていたのは、

①「御物」がいまだ「国宝」に指定されないこと。昭和64年昭和天皇が亡くなり、皇室所蔵の美術品が「皇位と共に伝わるべき由緒あるもの」を除き、国有となった。王義之「喪乱帖」、伊藤若冲「動植綵絵」などを含む808点だが、いまだ国宝に指定されていない。」・・これは芸大美術館に行ってきた(「日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」展・前期) | 雑文・ザンスのブログ (ameblo.jp) に詳細があるが、昨年秋に「動植綵絵」も含めて5点が「国宝」に指定された。

 

②正倉院宝物には国宝は1点もなく、桂離宮や修学院離宮も国宝ではない。・・その通り。ただし倉そのものは「国宝」に指定され、また「世界遺産」にも指定されている。

 

③国宝に税制の優遇はない。個人の所有者の場合、固定資産税は免除されているが、相続税は免除されない。それなので、相続に際して手放されるケースが多い。戦後の民間所蔵家で安定しているのは新興宗教の教団、教祖。→これも何となくそうかな?と疑問があり、再確認してみた。文化財保護に関する税制優遇措置について | 文化庁 (bunka.go.jp)がまとめてあるので現状では、改善がなされているようだ。(法的には、国宝も「重要文化財」の一部なので「重要文化財等」に含まれる。なお、実施開始年度については別表、ご参照。r1419243_05.pdf (bunka.go.jp)

 

④海外で人気の「浮世絵」は一点も「国宝」はない。

 

⑤明治以降のものがない。これは、旧東宮御所(赤坂離宮)、旧富岡製糸工場、旧開智学校が指定され、例外が出てきた。

 

それから、(ここには書いてなかったが)、陶磁器が少ない。所有者が指定後の「制約」を嫌うためとかも言われているが・。

 

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①の伊藤若冲の「動植綵絵」は、30幅がまとめて「国宝」として指定されている。30幅がまとめて「1件」として登録されたが、このたぐいの「まとめて1件」の登録は意外と多い。とんぼの本「国宝」(pp.20-23)にはその例が示されている。絵画、神宝、塑像、文書(例えば「東寺百合文書」は、27,067通)がある。