・サブタイトルは「なぜ国宝級の作品が海を渡ったのか」。
・台湾で昔、聞いた話で、「中国の文化大革命の時、貴重な大陸の文化財が二束三文の値段で大量に海外に流出した」そうだ。台湾にも沢山流れてきたそうだ。それを「目利き」の人は、タダ同様の値段で入手し、その後、大儲けしたらしい。まあ、これと似た話が、明治初期の日本で発生した。
・「廃仏毀釈」の大波が日本を襲い、仏教美術品が廃棄されたりした。ただ本書を読むと、「仏教」関連だけでなく、明治初期には日本の伝統芸術が軽んじられていた風が読み取れる。これも一種の「文化大革命」だったのだろう。そういう混乱期に、放置すれば、離散、消滅したかもしれない美術品に外人が目を付けて、大量に蒐集していった・・・。日本人の「目利き」も手助けをする・・。
・また、日本人があまり評価しなかった芸術作品を外人が「発掘」した例も沢山あったようだ・・。琳派、浮世絵、伊藤若冲など・・。(若冲を「発掘」したジョー・プライス氏は有名。「私の履歴書」にもとりあげられた。・・今年秋には、パリで「若冲展」も企画されるようで、また一層、若冲の評価が上がるかもしれない。)
・そんなわけで、大量に流出した日本美術だが、主な美術館は、アメリカでは、ボストン美術館、フリーア美術館、メトロポリタン美術館、シアトル美術館、クリーブランド美術館、シカゴ美術館、サンフランシスコ・アジア美術館、ホノルル美術館。欧州では、大英博物館、ギメ博物館(フランス)、キヨッソーネ東洋美術館(イタリア)、ケルン東洋美術館(ドイツ)など・・。これを「散逸を防いでくれてありがたい!」と捉えるか、「日本の貴重な文化財を、混乱期に安値で大量に買い漁った!」と捉えるか?まあ、そのまま日本にあったら第二次大戦の戦渦にあったかも知れない??
・沢山のエピソードが散りばめられていて、面白い・・。最終章には「松方コレクション」(国立西洋美術館の根幹を作った作品を蒐集・・)が書いてある。日本美術を蒐集した海外資産家の「逆バージョン」だ!!まあここには書いていないが「大原美術館」なんかもその例だろう。愛好家が資金力に物を言わせて一流美術品をコレクションに加えて行く・・。管理・運営がしっかりしていれば、「リスク分散」で美術品保存にはいいのかも知れないが・・。