11月 日
『孫の晴れ姿を見たい翁の話し』今昔物語 巻31第6話より
ジイタンだよ
『孫の晴れ姿を見たい翁の話し』の二回目だよ
役所ではなるほど、高貴な人の名をかたったとあらば許せぬことだし、みんなが眺めたい良い場所を一人占めするというのもけしからぬこと、というわけでね、さっそく当の翁を呼んで問いただすことにしたんだって。![]()
畏れながらやってきたお爺さんに、役人はね、何の権利があってあの場所に立て札を立て、高貴な方の参る場所であるからと皆が近づかぬようにしたのか、と問いただしたんだね。![]()
するとお爺さんはね、たしかに立て札を立てはしましたが、高貴な人が参る場所などと書いた覚えはありませぬ。それは立て札を読んだ人が勝手にそう思っただけのことです、と言ってね、さらにこう付け加えたそうだよ。![]()
私も年を取りましたので、人が大勢出て私のような老人はいつ押し倒されてケガをするか分からぬ祭りなどは見物しないようにしていたのですが、今年は孫が行列の中に加えてもらえることになり、何とか押し倒されたりせずに見物できる方策はないものかと思案して、ああいうことを考えついたのです、とね。![]()
役人の長官はね、孫の晴れ姿を見たいという翁の気持ちもわかるし、その工夫も考えようによっては感心もする、ということでね、結局何のおとがめもなく帰されたんだって。![]()
でもね、それからというもの、この話が広まったためにね、賀茂の祭りはもちろん、その他の祭りでもみんなが思い思いに勝手な立て札を立て、場所を占有し始めるようになったんだって。![]()
これ、今でもよく見る光景だよね。運動会とかお花見とかで、自分の場所を勝手に占有してシートなどを置き、場所取りをする光景がね。むかしも今も人の心ってこういう嫌らしいところがあるんだね。![]()
さて、くだんのお爺さんはね、はじめは罰されずに許されたことを世間にも吹聴して得意になっていたけれど、しばらくして、そういうよろしくない行いの先例を作ったということでそれなりに罰され、それからはしょんぼり、すっかりおとなしい翁になったんだって。![]()
もしかしたらさ、今も自分勝手に場所取りをする人たち、このおじいさんの子孫かもね。![]()
おわり じゃ またね