11月2日
『孫の晴れ姿を見たい翁の話し』今昔物語 巻31第6話より
ジイタンだよ
今日は『孫の晴れ姿を見たい翁の話し』だよ
むかし賀茂の祭りの日にね、みんなが祭りの行列を見ようと道々に群がったんだけど、そんな中にね、誰も近づかない一カ所があったんだって。みんなが華やかな行列を見ようとして押すな押すなとやっている中に、誰もいない一カ所があったんだ。

なぜかというとね、そこには『ここは翁の見物なさる所によって、近づかぬように』と書いた立て札が立ててあったんだ。だから誰もそこには近づかなかったんだよ。誰か高貴な方がおいでになる場所だと思ったんだね。
しばらくして行列が近づくころにね、そこにきちんとした衣服を着た一人のお爺さんが現れて、その立札のところに立ち、行列が通るのを眺めていたんだって。そして行列も通り過ぎるとね、満足げにゆっくりと立ち去っていったんだそうだよ。
近くにいたみんなは不思議そうにしていたけど、そのうちみんなはね、あれは誰だろうってささやきあったそうだよ。けど誰もわからないだね。きちんとした身なりはしていたけど、高貴な人とは思えない。高貴な人が着る服装とは違ったからね。![]()
そのうちね、あれはどこそこのお爺さんじゃないかって噂が出始めた。その人はね、ちょっと癖のある人でね、ま、周囲の人たちからあまり好ましく思われていなかった人なんだ。しかも無位無官で、あのような立て札を立てられる身分の人じゃない。![]()
あの爺さん、きっと我が儘な自己中心的な考えで、あんな立て札を立てたんだろうってことになってね、そのうちの誰かが役所に訴えたんだね。![]()
つづくよ