前回『さらば! もろもろの古きくびきよ -9-』で、いきなり大旋回しちゃいましたこのハナシ。

ムチャクチャなアクシデントに必死に対処しようとするOAさんを一生懸命書いております。

⇒ 具体的な発言&一挙手一投足をコマゴマと書き連ねているため、ウザいことは自覚しております😓

⇒ ウザウザ書き連ねているせいで、状況が動くのが次回へと先送りになってしまいました😰😰😰

 

ちなみに、グランディエさんの視力。

”見えるのは火だけ” では、いくらなんでも、しょっちゅう身近にいるオスカルさまに隠し通すのは無理なんでは?と勝手に考えまして、”霞んではいるけれど、日中など若干明るいところなら間近なものは うっすらと見える" カンジとさせていただきました💦

(⇒『さらば! もろもろの古きくびきよ -1-』(7月11日夜間)での視力描写と、ちとキビシいながらも無理繰り整合性をとりました😅)

 

 

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「見…なくてもわかる……ッ!」

自分の口から迸った(かれ)が討議室の静寂を破り、この状況が(まご)うことなき現実であることをオスカルに突きつけた。

閉じた(・・・)まま(・・)にあてていたを小刻みに震わせながら(ひるがえ)し、寄るべを求めるが如く、その指に重ねられていたを必死に握り締める。

 

 

万力(まんりき)のような力でを締めつけられたアンドレは、あやうく呻き声をあげそうになった。

〖お…おれは、こんなに馬鹿力なの…か?〗

なだめるようにオスカルのをやわらかく握り返しながら、彼は密かに心に誓った

〖もし無事に元の体に戻れてオスカルを抱き締めることができたなら、どんなに感情が高ぶっても慎重に力加減をコントロールしなければ……〗

 

 

どのくらいの時間、ただ黙ってそうやって手を取り合っていただろう。

やがて、オスカルのの力がゆっくりと緩み始めた。

この事態への衝撃を静めようと数度大きく息をつき、口を開く。

「どうやら……とんでもないことが起こっ…てしまったようだな」

なつかしく慕わしい声が口腔からじかに耳に響き、涙が溢れそうになるのをぐっとこらえ、懸命に軍人としての自分を呼び起こす。

〖明日は出動だ。対処を…急がねば〗

 

オスカルは思い切って右目をしっかりと開け、事態を確認するために自分の顔に焦点を合わせた。

……が、目・鼻・口はなんとか識別できるものの、それらが形作る表情までは明瞭には視認できない。

先刻一瞥(いちべつ)うすうす察しはついていたものの、これまでの自分の迂闊さが胸を()む。

〖おまえの…目……。こんなにも身近にいながら、わたしは…なぜ気づけなかったのか……〗

我知らず、小さな呟きがこぼれた。

「いったい、いつから……」

 

その短い呟きに、こんな形で彼の目のことを知らされてしまったオスカルの痛みが滲み出ていた。

〖ああ…、だから知られたくなかったんだ〗

───今まさに起こっている通り、オスカルを苦しませることがわかっていたから。

〖おまえが苦しむことはない。不安にのたうつのはおれだけでいい〗

彼は素早く思案を巡らせ、《もはや問うても詮のないこと》からオスカルの意識を引き剥がし、目下の最優先事項に話を転ずるために、注意深く言葉を選んで話し始めた。

「目がそんな状態になったのは、ほんのここ数日だ」

"いつから" との《問い》の核心をずらしてはいるが、まるっきりの嘘ではない。

仄暗く霞んでいる状態が《常時になってしまったのが ここ(・・)数日(・・)であるのは本当のことだ。

「だが、今いちばん重要な問題は そのことじゃない。

一刻も早くおまえとおれが自分の体に還ることだ」

 

それが正論だとはわかっていても、オスカルは声を荒げずにはいられなかった。

「だめだっ! たとえ体が元に戻っても、おっおまえの…おまえの目をこのままにしておけるかっっ!!」 

 

「落ち着け、オスカル。ほら、もう一度まわりを見てみろ。

霞んではいるが、うっすら見えてはいるだろう。

おれはもう慣れたし、それ以上悪い状態にはならんと医者は言っているんだ」

医者が言ったのは、”おそらく、ではありますが……” との希望的観測だったことは、口が裂けても明かせない。

 

「医者に…かかっているのか?」

「あったりまえだ。全然見えなくなったら おまえの足手まといになっちまうだろーが」

「本当だな!? 本当にこれ以上悪くはならないのだな!?」

「ほ・ん・と・う・だ! 信じろ」

何が何でも信じさせるために、抱き締めて唇の熱でオスカルの疑いを溶かしてしまいたかったが、自分の唇にキスをするのは さすがに気が進まなかったので、彼はぎゅっとをつぶってエイッ!と腹を括り、自分の硬い体を抱き締め、自分の髪をやさしく撫でて、ありったけの思いをこめて囁いた───今度は、正真正銘・掛け値なしの真実を。

「おまえのそばにいるためなら おれは何だってするさ」

 

自分の腕の中に包まれて、オスカルは心に誓った

〖現状維持などではだめだ。必ず…必ずおまえに明るい光を取り戻させてみせる…!〗

 

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オスカルは気持ちを立て直し、抱擁を解いて姿勢を正した。

 

「では急いで検討を始めよう。

対策すべき要点は3つだ。

第一は、入れ替わってしまった体を元に戻すこと。

第二は、もし元に戻れなかったら、今後どうするかということ。

第三は、体が元に戻ろうと戻るまいと、この右目を回復させること、だ」

加えて、胸の内で決意した。

〖わたしも、病から目を背けず、治療に正面から向き合おう〗

 

「確かに。元に戻ることが最重要だが、戻れなかった場合を想定して、あらかじめ手を打っておくことも必要だな」

加えて、胸の内で決意した。

〖もし元に戻れなかったら、絶対に希望を捨てず、なんとしてもその目の治療に取り組むぞ〗

 

 

そして...

口には出さずとも、ふたりの脳裏に同じことばが明滅していた。

 

明日 7月13日、出動。

どんなことがあろうとも、この最愛のひとを守りぬく。

──自分なりの やり方で──

 

 

 

 

『さらば! もろもろの古きくびきよ -11-』に続きます