ある日突然、世界は海に沈んだ。
不思議と呼吸が出来たので、陸や空中に生きる者たちも溺れてしまうことはなかった。
ゾウのシャロンは白骨の積み重なったような、その光景を見ていた。
「シャロン?どうかしたの。」
声をかけたのはテントウムシのマコ。
「ありゃ…骨か?」
「確かに…そうも見えるけどー。でも違うんじゃないかなぁ。ほらー頭の部分とかないし。」
「あれは死体だよ」
と、そこにイルカのミーニーが現れて、その問いに答えた。
「うわー!」
マコは驚いてシャロンの後ろに隠れてしまう。
「おっと、驚かせてごめんよ。大きな足音がして、見に来たら話し声が聞こえたもので、つい。」
「死体?」
シャロンは気にも止めずに続けた。
「そう。サンゴショウたちのね。」
ミーニーは話す。
世界がこうなる前は、ココはサンゴショウを中心とする、多種の生物で賑わう場所であったと。
だけど、突然の変化に、自生しているサンゴショウはなすすべがなかった。
「だから、骨というより死体そのもの。まぁ、骨でも間違いではないのかもしれないけど。」
ミーニーはそう話を結んだ。
シャロンはただジッと、白くなったサンゴショウを見ながら聞いていた。
シャロンの記憶。
昔のカケラ。
父親のガロンは行ってくると言った。
「どこへ行くの?」
「少し、遠い場所だよ。」
「水飲み場?」
「違う」
「泥あび」
「違う」
「じゃあ、どこへ行くの」
「少し、遠い場所だよ」
乾いた風。
星の見える木陰。
まどろみの中、そんな話をしたことがあった。
2人の、最後の記憶。
(少し、遠い場所か。)
「ねー、大丈夫ー?」
心配そうにマコが声をかける。
大丈夫だと、シャロンが応える。
「話をしてくれてありがとう、ミーニー。我々はもう行くよ。」
「礼にはおよばないよ。話しながら昔を思い出せて、良かった。ただ、今後は足音をあまりたてないほうが身のためだよ、シャロン。」
「善処するよ。」
シャロンとマコは連れ立ってその場所を後にしようとする。
その後ろ姿に
「最後に1つだけ聞いてもいいかな?」
「ん?なーにー?」
「君達はどこかに向かっているようにみえるけど。何か目的があったりするのかい?」
「あぁ、その通りだよミーニー。
我々は探しているんだ。」
「探している?何を?」
「太陽への道を、だよ。」