目。
部屋。
エアコン。
窓。
外。
ビル群。
赤い光。

耳。
エアコン。
ゴーゴーなる。
音。
走る車。
音。

宇宙のカケラ、カランコロン。
着替えて部屋をあとにする。
たったひとつだけ手を繋ぐなら、
さみしさだけを連れてゆく。


手。
動く。

足。
動く。


心はどうだろうか。


宇宙のカケラ、ザクリ、ザクリ。
やぶいて捨てた日記、似顔絵。
たったひとつだけ拾いあげるなら
後悔だけを歌にする。



わたしがすべて悪いのだろう。

わたしについてる、
瞳が2つ耳2つ。

ある日の声に背いてしまった、
愚かさだけを見つめてる。




わたしは砕けて灰になり、
思い出だけを見送った。











とけない氷があるとするなら、

それは誰かの心の中。


ある日突然、世界は海に沈んだ。



不思議と呼吸が出来たので、陸や空中に生きる者たちも溺れてしまうことはなかった。


ゾウのシャロンは白骨の積み重なったような、その光景を見ていた。

「シャロン?どうかしたの。」

声をかけたのはテントウムシのマコ。

「ありゃ…骨か?」

「確かに…そうも見えるけどー。でも違うんじゃないかなぁ。ほらー頭の部分とかないし。」

「あれは死体だよ」

と、そこにイルカのミーニーが現れて、その問いに答えた。

「うわー!」

マコは驚いてシャロンの後ろに隠れてしまう。

「おっと、驚かせてごめんよ。大きな足音がして、見に来たら話し声が聞こえたもので、つい。」

「死体?」

シャロンは気にも止めずに続けた。

「そう。サンゴショウたちのね。」

ミーニーは話す。
世界がこうなる前は、ココはサンゴショウを中心とする、多種の生物で賑わう場所であったと。
だけど、突然の変化に、自生しているサンゴショウはなすすべがなかった。

「だから、骨というより死体そのもの。まぁ、骨でも間違いではないのかもしれないけど。」

ミーニーはそう話を結んだ。

シャロンはただジッと、白くなったサンゴショウを見ながら聞いていた。



シャロンの記憶。
昔のカケラ。
父親のガロンは行ってくると言った。

「どこへ行くの?」

「少し、遠い場所だよ。」

「水飲み場?」

「違う」

「泥あび」

「違う」

「じゃあ、どこへ行くの」

「少し、遠い場所だよ」

乾いた風。
星の見える木陰。
まどろみの中、そんな話をしたことがあった。

2人の、最後の記憶。




(少し、遠い場所か。)





「ねー、大丈夫ー?」

心配そうにマコが声をかける。
大丈夫だと、シャロンが応える。

「話をしてくれてありがとう、ミーニー。我々はもう行くよ。」

「礼にはおよばないよ。話しながら昔を思い出せて、良かった。ただ、今後は足音をあまりたてないほうが身のためだよ、シャロン。」

「善処するよ。」

シャロンとマコは連れ立ってその場所を後にしようとする。
その後ろ姿に

「最後に1つだけ聞いてもいいかな?」

「ん?なーにー?」

「君達はどこかに向かっているようにみえるけど。何か目的があったりするのかい?」

「あぁ、その通りだよミーニー。
我々は探しているんだ。」

「探している?何を?」





「太陽への道を、だよ。」