【春を語った獣がしんだ】
ニュースキャスターが笑顔でそう語った。
新聞の一面に書かれた文字列に人々は踊った。
「とうぜんのばつですよ」
有識者と紹介された人が苦々しく話す言葉は、多くの人の声を代弁していた。
その様子を見ていた子どもが大人に問いかけた。
「どういう意味?」
応えはない。

【夏を奪った魚がしんだ】
ニュースキャスターが笑顔でそう語った。
新聞の一面に書かれた文字列に人々は歓喜した。
「せいせいしたよ」
「あたりまえだよね」
「よかったよかった」
「もうあんしんだよ」
町中に溢れかえった声は幾日も絶えることなく続いた。熱狂に近い感情の渦の中で、ある老人がつぶやいた。
「夏を奪う魚ってのは、一体なんだったんだ?」
応えはない。
だって誰も知らないのだから。


【秋を歪めた燕がしんだ】
ニュースキャスターが笑顔でそう語った。
新聞の一面に書かれた文字列に人々はうなずいた。
「このきょうくんをわすれてはいかん」
「つぎにつなげなきゃね」
「いたましいことだよ、うん」
まるで近しい友人が悲劇の海に沈んでしまった朝の様に人々はそのことについて語った。
実に残念そうに。
心の裡では、実に愉快そうに。
その様を遠巻きに見ていたホームレスは言った。
「総理でも死んだのか?…違うのか。まぁだれが死のうと俺には関係ないことだ。ところであんた、これ買ってかないか?」

【】
ニュースキャスターが笑顔でそう語った。
新聞の一面に書かれた文字列に人々は笑った。
有識者は語った「これはいいことだよ」
人々は口々にたたえた。
「これはれきしてきいぎょうだよ」
「せいきのだいはっけんだ!」
「おれ、さいんもらいにいこうかな」
「いっかいはたべてみたいよね」
「たとえることばがみつからないよ」



馬鹿には見えない服を着た王様がいた。
人々に服は見えなかった。
人々は称賛をおしまなかったのは、相手が王様だったからだ。
馬鹿な王様を笑うお話。
そのはずだった。
だが、今はどうだ。
きっとあるのだ。
馬鹿には見えない生地は、21世紀になり、本当に出来上がっていたんだ。
その生地で丁寧に織り上げられた召し物は、今はどこにあるのだろう?
分かるわけがない。
王様も人々もこれを書いている私でさえ。
誰一人、見えやしないのだから。



ゆらゆら、そよぎ、かすむあさ

水のない海に住む
形のないイキモノ

あったかくて、でもどこかさみしくて

触れては消えて

忘れては現れて

花は咲き散る影法師
踊る役者と晴れ舞台
さあさあ幕が開けたなら

つぎをさがしてさまよう

きっとずっと

水のない海に沈んだ

それはとても綺麗な



春のくらげ



わたしをみつける。


はじめましての嫌悪感。


まー、しゃーない。


いつだって問題は、これから、だ。


本当はなんだってできる。
どこにだっていける。


なのになんて余裕のなさなのだろう?
我ながら情けないの極みだ。


まー、しゃーない。


たくさんみつけよう。はじめましてをしよう。



好きになってもらうまで。