ある日突然、世界は海に沈んだ。
不思議と呼吸が出来たので、陸や空中に生きる者たちも溺れてしまうことはなかった。
海流に揺れる草木の中、ライオンのジニーがこの世を去ろうとしていた。
走っても走っても進んでいる気がしない。
サバンナでの栄華が全くの作り話のよう。
いっこうに満たされない空腹。
まとわりつく重い空気。
およそ似つかわしくないほど痩せ衰えようと、彼は魚を口にすることはなかった。
最期までシカやシマウマを追い、そして、
時を迎えた。
「…」
ジニーは揺れる青い世界で、心の整理をする。
(人生は勝ち負けの連続だ。
いい時もあれば、悪い時もある。
結局のところ変わらない。
乾季が長引いて干からびそうになった時もあった。
ニンゲンのハンターに狙われた時だってあった。
変化があった時に、うまく立ち回れる奴が生き延びて、そうでない奴が死ぬ。
勝手が違う。すぐに分かった。
だが、サバンナのルールはいつしか俺のルールにもなっていた。
今さら自分の中心は変えられない。
それで困る奴も俺にはいない。
ただ1つ、こんな俺のワガママを言わしてもられるなら
せめて太陽の下で、死にたかった。)
ジニーのヒゲが力なく、そよぐ。
たましいは、どこに運ばれて行くのだろう。