前話
【ブリザード-1】





父は腕の良い職人で王族の仕事の依頼すらも受けていたほどだったが、流行り病にかかり死んでしまった。

母は上の兄を可愛がっていたので必然、僕が養子に出されることになった。

寒い冬の日、新しい家に着くとそこには、黙々と仕事をする男が1人いた。痩せっぽっちで毛むくじゃらで体躯の大きな無口な人だった。

新しい父は挨拶をする僕に一瞥もくれることなく靴を作っていた。

彼も父と同じく腕の良い職人であったが、人付き合いもせず、生きて行く上で最低限の仕事だけを受け、後はひたすらに亡くなった妻の靴をつくり続けていた。

自慢ではないが、僕は兄弟の中で最も職人としての資質があった。

亡くなった父も良くそう言ってくれていたし、実際ココに来て半年が過ぎた頃には生活のための仕事は全て僕が受け持つようになっていた。


新しい父とはほとんど話をした記憶がない。数少ない会話の中で印象に残っているものと言えば、なぜ僕を養子にとったのかたずねた時のことである。
その答えは、

「お前の父さんには借りがあった」

の一言であった。

それがいつ頃のことで、具体的にどんなものであったかは、もう知るすべがない。

風邪をこじらせ肺炎にかかり、
妻と同じ病気だと医者を拒み、
そのまま帰らぬ人となった。

僕は18歳、今度こそ本当の一人ぼっちになってしまった。


僕が父と同じ、職人の元に養子に出された先は、雪が風と舞うとても寒いところであった。

13歳の冬の日のことである。