前話【ブリザード-7】
それは僕が本当に幼い頃。
まだ養子に出される前のこと。
1年半におよぶ長い仕事から父親が家に帰って来た日。
「ねーねー!なんのしごとをしてきたの!」
と僕が聞くと、父は自慢げにそして、満足そうに
「王様の住むお城のシャンデリアや、ワイングラス、色んなガラスで出来たものを作ってきたんだよ。」
そう応えた。
最初の父親は本当に腕の良いガラス職人であった。
なんでも魔法のように作り上げて行く様を見て、自身も将来はそうありたいと強く、強く願った。
王都に来て最初はガラス職人を始めようと思ったが、
資金や窯の問題などがあり、それは叶わなかったのだけど。
「ねーねー!」
小さな僕は父親に質問を続けた。
「どうすれば父さんみたいな、すごい職人さんになれるの!」
父は僕の頭を優しく撫でながら、こう言った。
「俺はいつも自分が作った物の向こう側に、それを使う人の幸せを見てんだ。
そのシャンデリアの下を、ステンドグラスを見上げる人を、グラスを傾けるその手を。
幸せの隣にあるものが、手抜きであっちゃいけねー。そういうこった。」
幸せの隣にあっても色褪せぬ、損なわせぬ、引き立たせる。
そういうものを、僕も作ったよ。
ほめて、くれるだろうか。
よくやったと、言ってくれるだろうか。
思い出とともに、
その夜、
僕は声を震わせて、泣いた。
僕が21歳の、真夏の夜のことである。