小さな女の子が、僕の姿を見て
「水色!ラッキー!」
と笑う。

そんなことが、どうしようもなく嬉しくて、

今日も生きる。




命に従うのならば
心は体の奴隷であり、
魂に従うのならば
体は心の奴隷である。





海が生まれた日のことを覚えている。

乾いている自覚などない大地の一片に、それはポツリと落ちた。

化学反応の必然だったか。
あるいは、神様みたいなものの贈り物だったか。

大地は受け入れ、そらは歓喜した。




海が生まれた日のことを覚えている。

降り注ぐものが、空気をズタズタに切り裂いていった。

冷えた手と求める手が永遠に触れ合えぬ場所へと遠ざかってゆく。

大地は嗚咽を隠そうともせず、空はそれをただ眺めているしかなかった。



海が生まれた日のことを覚えている。

眠りから覚めた太陽は、あまりの眩しさに目をしかめた。

それが自らの光だと気づくのに、随分とかかった。

頬を朱く染めた陽の記憶は、今も色が褪せることなく



海が生まれた日のことを覚えている。

煌々と輝く海原に、累々の死が絶えることなく降り積もってゆく。

声をあげるものも、それを聴くものもなく、うるさすぎる静。

誰も見ることの叶わぬ絵が、白と黒は同じ色だと



海が生まれた日のことを覚えている。



特別な優しさをもって編まれた、着るもののないセーター。



届ける場所のないラブソングの熱狂。



始まりのない物語のエンディング。




海が生まれた日のこと。