大納会に向けた12月4週(26-30日)の日本株は軟調となりそうだ。
テクニカル指標面で過熱感が根強い中、年明けに発表される海外の重要経済指標を見極めようと持ち高調整の売りが先行する。
南シナ海情勢やロシア大使銃撃など海外で不穏な動きもあり、株を枕に年越しとはいきにくい。
第4週は、国内外で経済指標やイベントに乏しく、市場参加者の関心は1月1週の米国の供給管理協会(ISM)製造業景況指数(4日)や雇用統計(6日)、中国の製造業購買担当者指数(PMI、1日)に向かっている。
三井住友アセットマネジメントの石山仁チーフストラテジストも、日本に先行して2017年相場が始まる海外の金利や株式、為替の変動リスクを踏まえると、「ここで買い急ぐことはない」と言う。
国内では、27日にJ.フロント リテイリングや高島屋など百貨店の四半期決算、28日に鉱工業生産の発表があるが、株価の変動材料としては力不足だ。
年明け大発会への布石週
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
為替のドル高・円安の一服も上値を抑える要因の1つ。
15日に1ドル=118円66銭を付けた後は117円台半ばを中心にもみ合いが続く。
トランプ次期政権の政策期待を背景とした米国長期金利の上昇が一巡していることが背景にある。
利ざや拡大期待の一服に加え、イタリアなど欧州の銀行経営問題への懸念も出てきており、岡三証券の阿部健児チーフストラテジストは、「トランプラリーで上昇が目立っていた金融株は引き続き売られやすい」と予想した。
もっとも、良好な需給環境は引き続き相場全体を下支えしそうだ。
19、20日の動きに象徴されるように、午前の株価指数が下落する局面では日本銀行が指数連動型上場投資信託(ETF)を742億円購入した。
また、信用買い残が3週連続で増加するなど個人投資家の買い意欲の強さも示されている。
第3週のTOPIXは0.4%安の1543.82と7週ぶりに反落した。
- 【市場関係者の見方】
三井住友アセットマネジメントの石山仁チーフストラテジスト
「日本市場は欧米に遅れて新年の取引がスタートするため、為替や米金利水準、米国株の変動リスクを考えると、慎重にならざるを得ない。
現行水準なら年間ベースでプラスのリターンを維持でき、バリュエーションが上昇傾向にある中で慌てて買う必要もない。
日経平均は最近のレンジ内の動きを想定するが、月末の益出し売りなどで週初に1万9000円に接近する可能性もある」
ベ
イビュー・アセット・マネジメントの佐久間康郎執行役員
「23日の天皇誕生日前後に相場に過熱感があると、年末まで高揚感が続き、いわゆる『掉尾(とうび)の一振り』が起きることが多い。
テクニカル指標面で現状過熱感が出ているため、その余熱が続き、一段高もあり得る。
重要イベントはほとんど通過し、目新しい材料はないが、年末までは理屈でうんぬん言える相場ではない」
アストマックス投信投資顧問の山田拓也運用部長
「株価指数は年初来高値水準を回復し、いったん来るところまで来た印象だ。
さらに上を目指すには、1ドル=120円への円安進行や米ダウ平均の2万ドル乗せな相当ポジティブな材料が必要になろう。
日本株は年明けに上下に値幅が出やすい傾向もあり、これを警戒する投資家は売買に慎重になりやすい。
ただ、トランプ次期米政権への期待値は変わっていない。
ドイツのテロ事件の市場への影響が軽微だったように、投資家センチメントも強い」
掉尾の一振(とうび(ちょうび)のいっしん)
掉尾(とうび)の一振とは、株価が年末にかけて上昇するといった株式相場の格言。
「掉尾」自体の意味は、最後になって勢いが盛んになることであり、掉尾の一振は、
年末に向けた株価上昇の期待感を込めて用いられることが多い。
機関投資家などの含み損解消による株式売却が一段落した後、年末にかけて
ドレッシング買いなどで株価が上昇することも掉尾の一振の要因の一つと考えられている。