キューバの精神的支柱だったフィデル・カストロ前国家評議会議長の死去を受けて、実弟のラウル・カストロ議長(85)が率いる社会主義政権は正念場を迎える。
低迷する経済の再建や高齢化している指導部の刷新に加え、外交面では中南米での左派政権の退潮への対処、2015年7月に国交を回復した米国との新たな関係の構築が課題となる。
病気療養入りしたカストロ氏からラウル氏が議長権限を暫定的に委譲されたのは06年のことだ。
正式に議長に就いたのは08年で、その後は段階的な経済改革を主導してきた。
公務員を大幅に減らし、自営業の対象を広げた。
市場原理の導入拡大策は「実利的」とも称される。
ここ5年程度で、首都ハバナの民営レストランの数は大幅に増え、提供される料理の水準も向上した。
コンピューターや携帯電話などのIT(情報技術)機器の修理や貸衣装、ペット製品販売店など従来は考えにくかった自営業者も生まれている。
とはいえ課題は多い。
工業化は遅れており、道路や発電所などインフラ設備の老朽化も目立つ。ハバナ郊外に設けた経済特区マリエルへの企業誘致も、政府のもくろみ通りには進んでいない。
今年1~6月期の経済成長率は1%と、想定の半分の水準にとどまった。
キューバ共産党と政府の指導部の高齢化も課題だ。
有力者には「革命世代」と呼ばれる70~80歳代が多い。ラウル氏はすでに18年の政界引退を表明しており、継承に備えてはいる。
13年には政権ナンバー2の国家評議会第1副議長にミゲル・ディアスカネル氏(56)を抜てきした。
同氏は次期国家元首として有力視されているほか、米国との国交交渉で活躍したロドリゲス外相らが周囲を支える集団指導体制に移行するとみられている。
ただ実務をこなす能力にはたけていても、カストロ兄弟のようなカリスマ性には欠けるだけに、慎重な準備が求められる。
加えて中南米域内で左派政権が退潮しているのもキューバにとっては逆風だろう。
旧ソ連崩壊後は最大の支援国となっていたベネズエラは原油価格の下落による自国内の混乱で、キューバ向けの割安な原油の供給量を絞っている。
域内大国のブラジルやアルゼンチンでも左派の大統領が政権から退いた。
米国との国交回復はしたものの、経済制裁は依然として残っている。
キューバへの訪問客数は大幅に増えているが、投資や企業進出はまだ本格化していない。
トランプ次期大統領はキューバとの関係改善について、オバマ大統領よりは慎重な可能性が高い。
トランプ氏の大統領選の勝利が決まった後にキューバが、航空機なども参加した軍事演習実施を表明したのは警戒の表れといえる。