原油先物や欧州株式相場の下落が投資家心理に影を落とした7日の米株式市場。
ダウ工業株30種平均は反落したが、カナダの製薬会社バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルが逆行高となった。
不適切な会計処理や薬価の釣り上げ問題に揺れてきたバリアントに対し、
市場はにわかに光明を見いだそうとしている。
バリアント株は7日、前日比1.34ドル(3.9%)高の35.51ドルで取引を終えた。
取引開始前に銀行など債権者から融資条件の修正や権利放棄といった支援を取り付けたと発表した。
来週中にも必要な手続きを終える見込みで、年次報告書の提出期限が5月31日、
1~3月期決算が7月31日にそれぞれ延期となった。
不適切会計や薬価のつり上げ問題を巡る調査の影響で、遅れていた
年次報告書の提出期限は29日に迫っていた。
期限を守れない場合には債務不履行(デフォルト)に陥りかねなかったが、
今回の支援でバリアントはひとまず延命期間を与えられる。
株価は4日に付けた年初来安値の25.27ドルからわずか3営業日で4割急伸した。
株価の急反発に最も安堵したのはおそらく、米著名投資家のビル・アックマン氏だろう。
同氏は「物言う株主」として広く知られ、バリアントの大株主でもある。
アックマン氏率いるパーシング・スクエア・ホールディングスが運用する
ファンドは不振が続いており、3月の運用成績はマイナス7%。
1~3月の3カ月間は実にマイナス25%と大幅に落ち込んだ。
アックマン氏は6日の投資家向け電話説明会で、
「我々はバリアントについて多くの間違いを犯してしまった」と謝罪した。
株価急落の背景として「バリアントは経営体制と企業統治にいくつもの問題を抱え、
投資家の信頼を失った」などと述べ、今後、経営への関与を強めていく意向を示した。
アックマン氏が指摘したように、延命期間中の喫緊の課題が企業統治の修復だ。
バリアントで長らく最高経営責任者(CEO)を務めたマイケル・ピアソン氏は
3月に事実上更迭され、現在は後任を探している最中だ。
取締役に加わるアックマン氏は新しいCEOを数週間のうちに選ぶ考えで、
「新CEOが決まれば株価回復のペースはとてもとても速まる」と強調した。
営業面でも信頼回復に向けた明るい材料がある。
バリアントは昨年10月、強引な手法でバリアント製品を販売していた医薬品通販会社フィリドールRxサービシズとの関係を絶った。
会計問題を調べていた特別委員会はこのほど調査を終え、修正を要する項目はないと発表した。
市場でも「我々の分析でも財務の虚偽表示が詐欺との主張にはあたらない。
株価は過小評価されており、ファンダメンタル(基礎的条件)に基づけば目標は66ドルだ」(BMOキャピタル・マーケッツ)との強気な予想が浮上している。
もちろん、楽観論ばかりではない。
米国みずほ証券のアナリスト、イリーナ・コフラー氏はバリアントがここにきて人員削減に踏み切ったことを受け「事業縮小の第一歩だ。
解雇が組織をマヒさせ、事業基盤が揺らぐ恐れがある」と指摘する。
バリアント株の売りを推奨し、目標株価は18ドルと年初来安値を大きく下回る水準に定めた。
ドイツ銀証券も2月以降、年次報告書の提出遅れを理由に投資判断と目標株価を取り下げたままだ。
ようやく問題解決の糸口がみえてきたバリアント株だが、冷静な評価を得て株価が持続的に回復するにはまだ時間がかかりそうだ。