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(ブルームバーグ):
「イスラム国」を名乗る人物が日本人の人質の身代金を政府に要求する映像が公開された事件で、戦後の安全保障政策の見直しを進める安倍晋三首相は試練に立たされている。
人命尊重とテロとの戦いをどう両立させるのか。
殺害予告時刻は刻々と近づいている。
中東歴訪から帰国した安倍首相は21日夕、事件をめぐる関係閣僚会議に出席。終了後、記者団に「厳しい時間との戦い」だが政府として総力を挙げて対処すると表明。
「国際社会と手を携えて、卑劣なテロとの戦いに万全を期す」と述べた。
菅義偉官房長官は同日午後の記者会見で、映像で72時間としている殺害予告の期限は23日午後2時50分ごろかとの質問に、「そう考えている」と語った。
菅氏は同日午前の会見で、家族による確認などから、映像にある2人の人物は「湯川遥菜氏および後藤健二氏と考えている」と述べた。
犯人から日本政府に接触はないという。
安倍首相がヨルダン、トルコ、エジプト各国の首脳と電話会談し、対応への協力を要請したとも述べた。
菅氏は、安倍首相が表明した総額2億ドル(235億円)程度の経済支援について、「ムスリムの人々を殺すためのものでは全くない。
あくまでも人道支援であるということをありとあらゆる手法で先方に通じるよう努力している」と説明。
映像では、殺害予告は日本政府による「愚かな決定の結果」として、2億ドルの身代金を要求している。
誘拐ビジネス
日本エネルギー経済研究所の田中浩一郎中東研究センター長は21日の電話取材で、経済支援と殺害予告の関連について、支配地域に入ってきた日本人を拘束し、「こういう形で使おうとしていた」と指摘。
安倍首相が中東を訪問してエジプトで支援を表明したタイミングに合わせて行動を起こしたとの見方を示した。
田中氏は犯行の背景について「イスラム国は油田を押さえ、世界で最も裕福なテロ組織と言われていた」が、原油価格の下落が収入にも影響。
以前資金源としていた誘拐ビジネスに回帰しているとみている。
2億ドルの要求は「最初から交渉が成り立たない金額」という。
映像配信後の安倍首相の記者会見がエルサレムで開かれたことについて田中氏は「まずかった」と指摘。「イスラム原理主義者からすると、聖地エルサレムを占領しているイスラエルの存在自体が認められない」と話した。
安倍首相は昨年7月、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を閣議決定。
26日召集の通常国会では、閣議決定を受けた安全保障法制が議論される。
上智大学の中野晃一教授(政治学)は、日本は戦闘状況にある海外の地域に部隊を送っていなかったので、テロリストの脅威からはこれまで比較的安全だったという。
その上で、今後は安倍首相が日本をより危険な状態にさらしているため今回のような事態が発生する、といった議論が批判的な立場の人たちから出てくるだろう、と指摘している。
(更新前の記事は第4段落の為替換算の単位をドルから円に訂正済みです)
記事についての記者への問い合わせ先:
東京 高橋舞子 mtakahashi61@bloomberg.net
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大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
中川寛之, 谷合謙三
更新日時: 2015/01/21 19:24 JST