2014.2.4 05:00
徳川時代に武士の思想的支柱として儒教が導入されたが、為政者の都合から「忠」と「孝」をすり替える変質がなされた。
本来の儒教では、多くの場合「忠」より「孝」が重要視される。つまり雇用主よりも家が大事だということ。
しかし、日本版儒教(!?)は家(孝)よりも会社(忠)に対する忠誠心を強いた。
入社から定年退職まで家族主義的な終身雇用制度が日本独特の愛社精神を醸成し、その団結心で高度成長時代を邁進(まいしん)してきた。
日本では会社にとどまらず、学校、官公庁、団体など自分の帰属する「枠」に規定されて生きている、あるいは自分の一生をそのような「枠」に吸収されてしまうような忠誠心を筆者は随所で見る。
愛社精神が戦後、世界第2位の経済大国に押し上げた原動力となったことは事実だ。
だが愛社精神という長所は、同時に自分が帰属する組織以外に生きる世界はないという閉鎖感情という副次産物を生んだ。
バブル崩壊後、インターネットとデジタル化が急速に普及し、多くの企業がビジネスモデルの変更を迫られ、組織の在り方が問われている。
右肩上がりの幻想は消え、終身雇用制度も瓦解(がかい)し始め、人材の流動化は加速する一方。
企業の存在理由、社会やコミュニティーとのかかわり、組織と個人の関係などあらゆることにおけるパラダイムシフトが進行している。
企業や組織団体だけではなく、社会全体が新しい国と社会のグランドデザインを描く創造と変革の時代になって久しい。
では今何が必要か!? 一つだけ挙げろと筆者が問われたら躊躇(ちゅうちょ)なくイノベーションと答える。
高度成長期にさまざまな分野でイノベーションが加速したのは人材の多様性が寄与したといわれている。
太平洋戦争期にさまざまな領域で研究開発していた技術者が、戦後GHQの指導によって、軍需から民生といった異なる分野に転身させられた。
この研究領域の「変換」が異種混合、新結合を促進して多くのイノベーションを生み出したという。
まさしく多分野、異分野の知の融合が新たな知の創出につながるという真実の事例だ。
イノベーションの必要条件の一つに「多様性」があることは間違いない。
しかし、多様性の導入で大切な点がある。それは性別、部署といった属性の多様性にとどまることなく、思考・意見の多様性にまで踏み込むことだ。
個の論理を封じ込める日本型組織の魔力を打破すると同時に、一人一人が自立と自律を強く意識していくことが喫緊の課題。
個人主義と利己主義を同一視させてきた思惑から脱却。そして「自分軸」に自信と誇りを持つ精神性を高めたい。
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【プロフィル】柴田明彦
しばた・あきひこ 1959年、東京生まれ。
慶大法卒。
83年に電通入社、新聞局出版・コンテンツ開発部長などを歴任。
2006年に退社し、
(株)A&Y TRUST 0915 社団法人NS人財創造機構を設立。
企業・団体の広報・宣伝、販売に関するコンサルティングなどを行う。