2014.2.11 05:00
某大学で3年間キャリアプログラムを講義した。
講義開始ほどなく、「携帯をいじる」「隣人と話す」「寝る」などの行為をする学生は日常茶飯事。
最前列で化粧を始める女子学生には驚いた。
最初は「なぜ聴かないのか!?」と憤り、「だから現代の若者は」と嘆き、ストレスは充満するばかり。
そのような時、エジプトで紀元前の石碑が発見され、そこにアラビック文字で「今どきの若い者は…」と刻印されていたことを知り、翻って自分の講義を反芻(はんすう)した。
「黙ってオレの話を聴け!」といった感覚で講義していなかったか!? 一方的にしゃべり倒す自己満足に陶酔していなかったか!?
社会経験に裏付けされたオレの話は聞くべきだ!と決めつけていなかったか!? 揚げ句に「俺の講義に耳をかたむけない今どきの学生」という「他責」で問題を片付けようとしていなかったか!?と。
電通在職中、“通過儀礼”のような会議で眠りこけていた自分を思い出した。
あの時なぜ居眠りしたのか。エキサイトするような会議だったら寝る暇はなかったのではないか。
90分間、飽きさせない、眠らせない、私語をさせない、化粧させない(笑)講義は究極のプレゼンテーションだ。
人様にプレゼンテーションの極意を偉そうにしゃべる前に、まずは体現してみろ!と自分に厳命した。
プロフェッショナルの第一義は顧客利益第一(client interest first)。
大学講義においても然(しか)り。大学生の反応などお構いなし。
無機質に話し、板書する“消化授業”などプロフェッショナルの所作とはいえない。
されどお客さまは神様!のごとく大学生に迎合することもあってはならない。
以来、他の先生方の講義を拝聴し、さまざまなプログラムの試行錯誤を繰り返しながら改良策に取り組んだ。
「教える」のは「教えられる」より上位といった「序列概念」は企業におけるタテ型OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で発揮されてきたが、現代の人材育成はその限りでは通用しない。
「教える」「教えられる」は、序列ではなくあくまでも時限的役割に過ぎない。
航空会社では、CRM(cockpit resource management)という概念を大切にしていると訊(き)く。
緊急時に自分自身で勝手に決断するのではなく、副操縦士、キャビンアテンダント、地上管制官等さまざまなリソースから情報を集め、その人たちの助けも借りながら的確に判断するという考え方。
船の世界においてもCRM同様「BRM」(Bはブリッジ)が船長のトレーニングに使われている。タテに教えるだけでなく、ヨコや斜めといった「学びあい」の発想を導入しなければ訴求しない。
これは人材育成すべてに通底する。
◇
【プロフィル】柴田明彦
しばた・あきひこ 1959年、東京生まれ。
慶大法卒。83年に電通入社、新聞局出版・コンテンツ開発部長などを歴任。2006年に退社し、
(株)A&Y TRUST 0915 社団法人NS人財創造機構を設立。
企業・団体の広報・宣伝、販売に関するコンサルティングなどを行う。