10月9日(ブルームバーグ):
世界の大手石油取引会社の1つ、ビトルは、ジュネーブにある拠点を移すようドバイとシンガポールから誘いを受けている。スイスを世界の商品取引の中心地に押し上げた求心力となってきた政策の変更を同国政府が検討しているからだ。
ビトル・グループの取引部門であるビトルのデービッド・フランセン最高経営責任者(CEO)は過剰規制と増税の恐れがあるとし、「スイスなどの将来がどうなるのか懸念している」と語る。
マレーシアやカリブ海諸国など「他地域の当局から積極的な誘致要請を受けている」ことを明らかにした。
5月以降、商品取引 業界の調査と関連政策の見直しを進めているスイス政府は、石油や穀物、コーヒー生豆の取引拠点であるが故に「国の評判がリスクにさらされている」と受け止めている。
同国はタックスヘイブン(租税回避地)の1つに挙げられるのを回避するとともに、銀行11行が米国人顧客の資金の脱税を手助けしたとされる嫌疑をめぐる米政府の調査の解決に向け、2009年3月に国際基準に準拠することを決定。
商品業界への政策の見直しはこの決定に基づき、年内をめどに実施されている。
スイスでは商品取引会社のビトル、グレンコア・インターナショナル 、トラフィギュラ・ビヘーアが売上高で大手食品メーカーのネスレを上回っている。
脱税に対する取り締まりが世界的に強化される中、スイス政府は業界規制の欠如が同国にとって打撃となることを懸念している。
ジレンマ
法律事務所クライド・アンド・カンパニー(ロンドン)の弁護士、
ベン・ノールズ氏は
「急成長を遂げる商品業界への規制強化を求める圧力に屈するか、世界の取引拠点としての地位を失うリスクを取るか、スイスはジレンマに陥っている」と指摘する。
スイスの商品取引事業はジュネーブとツークに集中している。
スイスの調査機関KOFによると、商品取引がスイス経済に占める割合は過去10年間に10倍に拡大した。
スイス経済官房長室によれば、商品取引業界は同国の国内総生産(GDP)の3.5%に相当する200億フラン(約1兆6800億円)を占める。
スイス下院の第2党、社会民主党のカルロ・ソマルガ議員によると、商品業界はジュネーブだけで約8000人の雇用を創出しているが、その効果を上回るコストを支払っている。
同議員によれば、フセイン元大統領統治下のイラクでの国連の石油食料交換プログラムに関連してスイス企業が絡んだ不正問題の影響で同国の企業が国外で契約を獲得する機会が損なわれ、世界の金融拠点としての役割が低下する可能性がある。
この問題についての報告書を中心になってまとめたポール・ボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は05年10月、国連の調査で2253社が石油事業契約獲得のためイラクに対し違法な資金を支払ったことが明らかになったと述べた。
消費者のコスト
同議員は「資源取引会社によるいかがわしい行為はこれらの企業の評判の低下につながるだけではない。スイス全体の評判が低下することを恐れている」と語る。
対イラン制裁でスイスが米国が設定した基準を適用したとしても取引監督システムの欠如により石油食料交換プログラムの際のような汚職が繰り返されるリスクがあると、ソマルガ議員は指摘する。
「チューリヒやツーク、ジュネーブで取引される商品の合法性をチェックする特別な監督当局はない。再びスキャンダルが発生しないという確信はない」と述べた。
一方、フランセン氏は9月18日、英・スイス商工会議所の会合で、主に金融投資家を対象としているが取引会社や海運会社もヘッジに利用する契約に対する米国の規制について、過剰規制は商品の現物を売買するビトルなどの企業の効率性を損なうとの見方を示した。
スイス政府の調査について特にコメントするのは控えたものの、「最終的に消費者のコストが増加するとみられ、それは政府が望んでいることではない」と指摘した。
少数政党のオルタナティブ・レフトの元議員、ジョゼフ・ツィスヤディス氏は、贈収賄や脱税がどの程度行われているか誰も把握していないとして商品業界は秘密のベールに包まれているとの見方を示した。
原題:Swiss Target Commodities Secrets Risking $21 BillionHegemony(抜粋)
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更新日時: 2012/10/09 14:06 JST