第6部・ちから(2)結ぶ<下>/情報誌で橋渡し役に/まちの将来、語っぺし
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学生ボランティアらが「唐桑御殿」と呼ばれる民家に寝泊まりし、被災地支援を続ける気仙沼市唐桑町で今、フリーペーパーの創刊準備が進んでいる。
タイトルは「からくわ未来予報誌 KECKARA(けっから)」。
唐桑で活動するボランティアの集まり「唐桑ボランティア団(唐ボラ団)」が編集、発行する。
「けっから」は方言で「ただであげるから」の意味。
「厳しい現実の中で、少しでも前向きになれる話題を提供したい」という願いを込めた。
1月中の創刊が目標だ。
唐ボラ団のメンバーが昨年12月20日、町内の小原木中を訪れた。
全校生徒39人との懇談会。
「取材の一環として、中学生の声を聞かせてほしい」と学校に持ち掛けた。
<真剣な若者>
震災のこと、唐桑の将来、自分の夢…。
何を感じ、どう行動したいかを自由に語ってもらい、未来の自分宛てにメッセージも書いてもらった。
「震災前より美しい唐桑を、私たち唐桑人が届けます」「周りの役に立つ人に」―。
編集責任者で唐ボラ団事務局の加藤拓馬さん(22)は「若い人の真剣な思い」を感じたという。
加藤さんがフリーペーパーの発行を思い立ったのは「住民が復興、まちづくりについて考え、気持ちを共有してほしい」と考えたからだった。
早稲田大在学中、中国でハンセン病の元患者が隔離された村で、道路を造るなどして支援するサークル活動に没頭した。
震災が起き、「今までやってきたことを役立てるのは今しかない」と大学卒業後、入社予定だった会社を休職し、唐桑に移り住んだ。
唐ボラ団を結成し、がれきの撤去などに取り組む中で感じてきたのが、地域の人たちの抱く「将来への不安」だったという。
漁港は壊滅し、家族や家、職を失い、地域を出ていく人も多い。
「唐桑は一体どうなってしまうのか」。町の将来像や復興に意見を持っていても、住民のつながりが強い分、しがらみもあって、声高に語る人は少なかった。
ボランティアが地元の声を結ぶ橋渡し役になろう―。その仕掛けが、フリーペーパーだった。
<重いテーマ>
創刊号の特集では、重いテーマを選んだ。
「高台移転への思い」。賛否両論あるデリケートな問題に正面からぶつかる。
「外の人間の私たちだからこそ、客観的に伝えられる」と加藤さん。
取材に応じてくれる住民の声を聞いて回り、率直な思いをそのまま紹介する。
仮設住宅でお茶飲み会を開いたり、地元の祭り運営を手伝ったりと、幅広い活動を展開する唐ボラ団。
最初はいぶかしんでいた住民たちも、徐々に信頼を寄せるようになってきた。
自宅のプレハブ小屋を開放するなど、唐ボラ団に協力する社会福祉法人常務理事の馬場康彦さん(64)は「本来、地元の私たちがやるべきことを担ってくれ、地元の人間が気付かないことも指摘してくれる」と感謝する。
フリーペーパー「KECKARA」はA4判20ページで、3000部を予定する。
資金は広告やカンパで賄う。
次号は未定だが、反応を見ながら発行し続けるつもりだ。
昨年11月、町内に配った「予告編」の冒頭で、加藤さんはこう書いた。
「今日を生きるのに精いっぱいな私たちへ 夢見てぇな話、語っぺし」
住民との結び付きが深まるのを感じているからこそ、まちづくりにも携わりたい。
「夢見てぇな話」の実現をサポートしたいと思っている。

