日銀は昨年12月に「持ち直しの動きが一服している」(白川方明総裁)として景気判断を下方修正しており、アンケート結果はこれを裏付けた形だ。
昨年夏時点は、東日本大震災で寸断されたサプライチェーン(部品供給網)の復旧による生産活動の増勢や、被災地の復興需要の景気支援効果が見込まれていたが、こうした期待は薄れた。
今回の回答では「円高・株安がマイナス要因」「輸出が減速した」など、外部環境の変調を訴える声が上がった。
実際、政府は昨年末に2012年度の国内総生産(GDP)の成長率を実質2.2%、名目2.0%とする政府経済見通しを閣議了解し、昨年8月時点の見通し(実質2.7~2.9%、名目2.6~2.8%)から下方修正した。
欧州債務危機の拡大で欧米景気の減速感が強まったためだが、民間シンクタンクの景気見通しはさらに厳しい。
第一生命経済研究所は、12年度のGDP成長率を実質1.4%と予測。
企業の慎重姿勢から「設備投資も弱含む可能性がある」として、12年4~6月期はほぼゼロ成長を見込む。
◆51%「年内に回復」
景気の回復時期について聞いたところ、最も多かった回答は「12年後半」で、主要企業の半数は日銀がメーンシナリオとする「年内回復」を見込んでいるものの、先行き懸念の強まりを反映して、回復は「14年以降」にずれ込むとする悲観的な回答も12%に上った。
一方、東日本大震災の業績影響については、約8割が「解消された」との前向きな回答だった。
震災直後からの最大の懸案だったサプライチェーンについてはほぼ復旧したとする企業も多く、全体として業績への影響度は小さくなったとみられる。
ただ、「被災地では完全復旧に至っていない」など、まだ解消されいないとする企業も9%あり、被害の傷の大きさも改めて浮き彫りとなった。
震災後の電力供給不足に対しては「生産活動の重しだ」など、不安を訴える声が強い。
さらに、東京電力福島第1原子力発電所の事故に伴う風評被害への懸念も消えていない。
「出荷商品の放射線量計測を継続中」など、震災影響への対応でコスト増を強いられている状況は変わっておらず、企業業績に依然、影を落としている。
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■8割「産業空洞化起きる」
新興国市場の成長の取り込みに向け海外戦略を加速しているところに、歴史的な円高が加わり、大多数の企業はこのままでは国内の産業空洞化の進行が避けられないとしている。
空洞化のリスクについて聞いたところ、約8割が空洞化が起こるとの見方を示し、このうち約3割は「すでに起こっている」とした。
これに「大いに起こりうる(19%)」とした回答を合わせると、ほぼ半数の企業が空洞化の進行を確実視している。
背景には、円高による深刻な収益下押し圧力がある。
2011年度決算の業績への懸念材料の問いでは、欧州債務危機による海外経済の減速を懸念とする回答数を大幅に上回って円高が最多となり、企業が自己防衛で海外シフト志向を強めていることをうかがわせた。
「円高対応で、部品の海外調達が相当進んでいる。
(空洞化は)水面下で想像以上に広がっている」との具体的な回答もあり、主要企業に比べて経営体力が弱い中堅・中小企業は、より国内事業基盤の維持が困難になっているとみられる。
また、回答企業からは「電力不足の長期化などの悪条件が改善されなければ、さらに(空洞化が)加速する」「国内需要が低迷すれば、拠点を移転せざるを得ない」との意見もあった。
政府・日銀は昨年、円相場が戦後最高値の1ドル=75円32銭に急騰したことを受けて、大規模な円売り介入に踏み切った。
だが、その後も円相場は1ドル=77円前後で高止まりしたままで、政府は有効な円高是正策を打ち出せていない。
空洞化で雇用が減り、技術移転も進めば、市場の魅力低下がさらに空洞化に拍車をかける見通しで、国内経済は地盤沈下の悪循環に陥るリスクが高まっている。