欧州債務危機や歴史的な円高の逆風を乗り切るため、主要企業が今年、堅調な成長が見込まれるアジア市場への投資を一段と拡大する。
フジサンケイビジネスアイが主要企業116社を対象に実施したアンケートで、約7割が2012年度に海外事業の拡大を計画していることが分かった。
有望視する地域では、インドネシアやベトナムをあげた企業数が“ポスト欧米市場”の一番手とされてきた「BRICs」の一角を上回り、企業の成長戦略は新たな段階に入り始めている。
対照的に、アンケートでは国内空洞化のリスクが一段と高まっている実態も浮き彫りとなり、野田政権には実効性のある競争力強化策が求められる。
◆人材採用でも軸足
アンケートの回答では、12年度の海外事業計画について「拡大する」が68%に上り、「平年並み」が8%だった。
今年は欧州債務危機の影響で世界的な景気減速が見込まれているが、日本企業の海外投資の勢いはむしろ強まる。
海外に経営の軸足を置く姿勢は人材採用面でも顕著だ。
13年春の新卒者採用計画を聞いたところ、12年採用の実績に比べ「増やす」との回答は全体では9%にとどまったが、海外の計画を「増やす」とした企業は24%と、大幅に増えた。
今後3年間(12~14年度)で有望な市場を複数回答で聞いたところ、国内に巨大消費市場を抱え、主要国の中でも財政・金融政策による景気刺激の余力がある中国がトップ(65社)。これにインド、インドネシア、ベトナムが続いた。
インドネシアやベトナムへの期待は、ブラジルやロシアを有望とする企業の数を大きく上回った。
日本から近い地理的条件や、自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)などの通商政策の動きも背景に企業の成長戦略における東アジアの存在感が増している。
◆拠点分散化の動き
シンクタンクのみずほ総合研究所によると、欧州危機の影響を踏まえても、12年の経済成長率は中国が8.8%、インド6.7%、インドネシア6.1%、ベトナム5.5%と見込まれており、日本企業の東アジアへの傾斜は主要国経済の不振の裏返しともいえる。
一方、海外の生産拠点として今後3年間に有望視している地域の回答では
中国(17社)、ベトナム(16社)、タイ(16社)が拮抗(きっこう)した。
中国では最低賃金の引き上げや、労働条件の改善を求めるストライキの頻発などで労務コストが上昇。
タイは昨年の大洪水で、現地政府の災害対応の不備が露呈したものの、両国の生産基盤を重視する日本企業の姿勢は変わらなかった。
ただ、「労働力が豊富」「コストが安定している」との理由で高い評価を得たベトナムの台頭は、企業の拠点分散化の動きも示唆している。
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■欧州危機、見通せず 今年後半の収束シナリオに期待
世界経済の最大のリスクである欧州債務危機はいつ収束するのか。
主要企業のほぼ半数はアンケートに「分からない」と答えたほか、収束は2012年後半以降との回答も計30%を占め、大多数が問題の長期化を覚悟している。
「年初早々にも、主要国が事実上の協調金融緩和策を進めるだろう」。
野村証券金融経済研究所の木内登英チーフエコノミストは、欧州危機の今後の展開をこう分析する。
同研究所は欧州ユーロ圏の12年の実質域内総生産を前年比1.0%減と予想。
11年10~12月期にすでに景気後退入りした可能性が高く、11年の1.5%増からマイナス成長に転じるとした。
債務削減に向けた各国の緊縮財政で景気の減速は避けられず、木内氏は欧州中央銀行(ECB)が年初にも、国債の大量購入を柱とする事実上の量的緩和策に踏み切ると指摘。
さらに、欧州リスクの拡散を防ぐため、米連邦準備制度理事会(FRB)も住宅ローン担保証券購入を拡大する追加の量的緩和に動き、中国は4~6月期までには利下げを実施、日銀も資産の買い取り枠を拡大すると読む。
危機の収束時期で、主要企業の回答は「分からない」を除くと、「12年後半」が14%で最多だった。
市場には、主要中央銀行の危機対応の政策協調が年央までに整えば、「今年後半には世界経済が再浮揚する」(木内氏)との見方があり、危機収束への企業の「期待シナリオ」はこれが念頭にあるとみられる。
もっともユーロ圏の財政問題は根深く、収束は「14年以降」との回答も1割に上るなど、企業は短期的な事態収束の決定打はないとみており、危機の再燃を警戒している。
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■国内景気、減速感強まる 円高など外部環境の変調に懸念
主要企業で国内景気の先行きに対する厳しい見方が強まっている。
フジサンケイビジネスアイのアンケートでは、景気の現状認識について52%が「踊り場」と答えた一方、すでに景気後退入りしたとの回答(「緩やかに後退」と「後退」の合計)が19%に達した。
「緩やかに拡大」との回答も26%あったが、拡大局面と認識する強気の企業の割合は、昨年夏のアンケートへの回答(「拡大」が5%、「緩やかに拡大」が47%)から半減した。
