FULL MOON 夜を駆ける 27
秋の夜は澄み、空は高く月を運んでいた。
月の作る影が、あたしの前を歩いていく。黒い獣もあたしも とぼとぼ足を運ぶだけで、何も話はしなかった。
いっぺんに起こった出来事に頭が追いつかず、まだ整理できずにいた。
村外れの家には、夜更けだというのに明かりが見え、父が起きていることが伺えた。
帰らない娘を心配して起きていてくれたのだろうか。
怒られるのを覚悟して帰るしかない。
素直に起こったことを話すのか、言い訳をするのか考えていなかった。
無理矢理話を作ってばれるよりは、適当にごまかすほうがいい。
家の手前で、黒い獣にお礼を言って別れるつもりで、立ち止まった。
「もうここで大丈夫だから」
『俺はまだ用がある』
獣は離れる気がないのか、すたすたと家の入り口まて歩いていき、あたしが扉を開けるのを待っている。
「あたしが遅くなった言い訳をしてくれるつもり」
あたしの父が変わり者だとしても、喋る獣と仲良く会話するとは思えない。
「悪いけどかえって迷惑だから」
『俺の用があるのは、中にいるヤツ。悪いけど入れてもらうよ』
「父に合わせる訳にはいきません。無事に帰れなくなるから」
いきなり獣が家に侵入してきたら、父がどうするかなんて火を見るより明らか。棒で叩いて追い出すに決まってる。
『早く開けろ、俺も客なんだ』
「そこまで言うなら、知らないから」
がたりと戸を開けると、隙間をするりと抜けて中に入っていった。続いてあたしも戸を潜る。
「ただいま戻りました」
父は声がしたので、あたしを見て、お帰りと言った。卓を挟んで女性と向きあっているけれど、小さな子供のようでありながら大きな木のような人だった。
年老いているけれど、年齢のわからない人だった。
見たことのない服に、長い髪を編んで、青い石の飾りのついた首飾りをしていた。
黒い獣はまるで犬みたいにおとなしく、彼女の足元に座り込みぬいぐるみのように動かなくなった。
『お帰りなさい』
彼女を一目見て、あたしは目が離せなくなった。
月の作る影が、あたしの前を歩いていく。黒い獣もあたしも とぼとぼ足を運ぶだけで、何も話はしなかった。
いっぺんに起こった出来事に頭が追いつかず、まだ整理できずにいた。
村外れの家には、夜更けだというのに明かりが見え、父が起きていることが伺えた。
帰らない娘を心配して起きていてくれたのだろうか。
怒られるのを覚悟して帰るしかない。
素直に起こったことを話すのか、言い訳をするのか考えていなかった。
無理矢理話を作ってばれるよりは、適当にごまかすほうがいい。
家の手前で、黒い獣にお礼を言って別れるつもりで、立ち止まった。
「もうここで大丈夫だから」
『俺はまだ用がある』
獣は離れる気がないのか、すたすたと家の入り口まて歩いていき、あたしが扉を開けるのを待っている。
「あたしが遅くなった言い訳をしてくれるつもり」
あたしの父が変わり者だとしても、喋る獣と仲良く会話するとは思えない。
「悪いけどかえって迷惑だから」
『俺の用があるのは、中にいるヤツ。悪いけど入れてもらうよ』
「父に合わせる訳にはいきません。無事に帰れなくなるから」
いきなり獣が家に侵入してきたら、父がどうするかなんて火を見るより明らか。棒で叩いて追い出すに決まってる。
『早く開けろ、俺も客なんだ』
「そこまで言うなら、知らないから」
がたりと戸を開けると、隙間をするりと抜けて中に入っていった。続いてあたしも戸を潜る。
「ただいま戻りました」
父は声がしたので、あたしを見て、お帰りと言った。卓を挟んで女性と向きあっているけれど、小さな子供のようでありながら大きな木のような人だった。
年老いているけれど、年齢のわからない人だった。
見たことのない服に、長い髪を編んで、青い石の飾りのついた首飾りをしていた。
黒い獣はまるで犬みたいにおとなしく、彼女の足元に座り込みぬいぐるみのように動かなくなった。
『お帰りなさい』
彼女を一目見て、あたしは目が離せなくなった。
種
そこに花があって
僕がいたから
僕は花を見た
香りをかいだ
長い時間を生きる者
短い時間を生きる物
どれだけの違いがあるだろう
胸が痛むのは
そこに心があるからだね
それなら
花の心はどこにあるんだろう
微笑むように咲く花かもしれない
咲くことを喜んで
微笑んで世界を見つめ
次の代の種を育む
花の意思で次の代の種は
より良い選択をするための知識を持っている
ギュッと握りしめた種を
旅立たせる方法も
芽吹くための条件も
必要なもの全部
そのなかに詰まっている
ちいさな希望
僕がいたから
僕は花を見た
香りをかいだ
長い時間を生きる者
短い時間を生きる物
どれだけの違いがあるだろう
胸が痛むのは
そこに心があるからだね
それなら
花の心はどこにあるんだろう
微笑むように咲く花かもしれない
咲くことを喜んで
微笑んで世界を見つめ
次の代の種を育む
花の意思で次の代の種は
より良い選択をするための知識を持っている
ギュッと握りしめた種を
旅立たせる方法も
芽吹くための条件も
必要なもの全部
そのなかに詰まっている
ちいさな希望
