ふんわりシフォン -73ページ目

FULL MOON 夜を駆ける 32

夢見心地でごろりと横たわると、ぎしりと寝台が軋む。ずいぶん派手な音をたてるのねぇ。

寝台が壊れちゃいそう。

目を閉じた感覚は、耳と鼻が鋭くなるので、遠く庭の枝に遊ぶ鳥のさえずりさえはっきりと聞き分けられる。

鳥の奥さんの井戸端会議が始まって、今日の餌についてあれこれとさえずっている。

あの家はケチだからだめ、今度はこの家にしなさいよだとか、どこの畑に芋虫がいるだのと話している。

鳥の世界も現実的ね。



くんくんと鼻をならすと、家の竃の湯気の匂いがした。父さんが、先に起きて朝餉の支度を始めたのかもしれない。



起きなくちゃだなぁ。



寝返りを打ち、思いきって目を開けると、獣の前足が目に入ったので、慌てて身を翻す。

ところが、獣の足はついてくる。自分の手を見ようとしたら、目の前で動いているのは獣の前足だった。

試しに握ってみたら、にゅっと鋭い爪がでた。




あたし、獣になっちゃってる。

FULL MOON 夜を駆ける 31

席を立った彼女を見て、慌てて声をかけてしまう。

「また、会えますか」

いきなり会ったばかりの客人に聞くことではない、そう思い至って顔に朱がのぼる。

『「もちろん、ワタシが生きていたら、また会えるワ」』

『斑、すぐに呼び出されても困る』


黒い獣は眉間にしわを寄せている。


「じゃあ、また会えるんですね」



たくさん助けてもらったのに、黒い獣のことは何も知らない。黒い獣が斑と呼んだこの人も。



『「満月の夜に遊びにオイデ。迎えを寄越すカラ」』



確認を取るために父を見ると、頷いていたので安心する。なんのために、この二人はここに来たのだろう。
一番大きな疑問が残っている。




明るい月の下、遠ざかる二人を見送りながら、どこから来たのか疑問がわく。

玄関まで父と見送りに出て、質問を浴びせようと考えていたのに、体は休息を求めていて、頭がぼんやりしてきた。



起きたら聞こう。

安らげる自分の部屋で布団に包まれると、あっという間に眠りの波が押し寄せてきた。

月夜



月の明るい こんな夜は

空を仰いで 光を受ける

さらさらと

さらさらと



光は地上に降りそそぎ

きらきらと

きらきらと

夜を照らす



夜の光に

息をひそめ

まどろむ木々たち



帰ろう 月と

月の作る

自分の影と



いつも見守る

月を連れて